交通事故で歩けなくなった元走り高跳び選手が、パラカヌーと出合って再起する姿を描いた映画「水上のフライト」(13日公開)。兼重淳監督は「分かりやすいスポ根ものではなく、若者の人間的な成長や家族の物語を作りたかった」と語る。

 将来を有望視されたスポーツ選手から一転、車椅子生活を余儀なくされた主人公藤堂遥は、俳優中条あやみが演じた。モデルとしても活躍する中条の「健全で真っすぐな雰囲気が、アスリートのイメージにぴったりだった」と兼重監督。

 見どころに挙げるのは、劇中に3回登場する遥の涙だ。中条に対し「3回とも涙の意味が違うので、泣き方を変えてほしい」と課題を出したという。

 いずれも具体的な演技指導はせず、遥の心情の説明にとどめた。脚が動かない悔しさで流す涙、絶望の中で障害と向き合うきっかけになった涙、支えてくれた母親への感謝の涙。「それぞれどんな泣き方がふさわしいか、彼女が自分で考えて、見事に演じ分けた」

 走り高跳びとパラカヌーの競技シーンをこなした中条の高い身体能力にも舌を巻く。特にカヌーの上達ぶりは目覚ましかったといい「当初は合成で処理しようと思っていた場面も全部、本人がこいでしまった。作品にこれ以上ないリアリティーをもたらしてくれた」と感謝した。