世界的評価が定着している小津安二郎監督の映画「東京物語」(1953年)の知られざる撮影風景を伝える写真が多数見つかり、小津のふるさと東京都江東区の古石場文化センターで公開されている。開催中の「スチル・フォトで甦る小津安二郎」展で31日まで。入場無料。

 市民団体「全国小津安二郎ネットワーク」副会長で長野県立大教授の築山秀夫さんが、「東京物語」のロケハン(ロケ地探し)から撮影本番まで約900枚のスナップ写真を貼付したスクラップブックを、大阪市の古書店から昨年入手。背景解説を加え展示した。

 宣伝用に雑誌や新聞へ提供した写真も含まれており、当時の製作サイドで記録保管していたアルバムのようだ。

 小津の代表作「東京物語」は、尾道(広島県)の老夫婦(笠智衆、東山千栄子)が東京に暮らす長男(山村聡)らを訪ねる旅を通して、戦後日本の家族像を描いた。

 スクラップ帳には、戦死した次男の嫁(原節子)が住むアパートや、長女(杉村春子)が営む美容室のセット、原と次女役の香川京子と小津のスリーショットなども収められている。尾道ロケでランドセルを背負った小学生に演技指導しながら微笑する小津の姿も。

 映画では熱海(静岡県)の海辺の堤防上を歩く老夫婦が、陸側からのアングルで撮られ、向こうの海へ落ちてしまわないかとはらはらするシーンがある。写真を見ると、実は堤防下に足場が組まれ、撮影現場の安全管理は万全だったようだ。

 築山さんは「名作『東京物語』の舞台裏をたどれる貴重な資料を見てほしい」と話している。