食事から健康支える

 企業や自治体、個人に対し食に関するトータルサポートを行う「おたべーる」(東京都豊島区)。フリーランスの管理栄養士・緑川涼佳さん(41)=紫波町出身=が2018年に立ち上げた。「日本中の全ての人を健康にしたい」との思いで、商品開発や栄養相談など全国各地を飛び回る。

 病院や福祉施設などで働く管理栄養士が多い中、あえて独立の道を選んだ。企業の商品開発や販売促進の支援に加え、クリニックで乳幼児健診の栄養相談や偏食になりがちな発達障害の子を持つ親の相談に応じたりと業務は幅広い。

 食関連の起業家支援や地域の農産物を生かしたレシピ開発にも力を入れ、活動を全て一人でこなす。「企業の売り上げがアップしたり、障害のある子の血液検査の結果が改善したり、やりがいは大きい」と語る。

 子どもの時は警察官だった父親の影響で転校が多かった。小学校は3校、中学は2校を渡り歩き、県内各地で暮らした経験から「岩手がまるごと古里」とほほ笑む。

 中学生の頃の夢はパティシエ。海外留学を目指し、不来方高普通科外国語学系へ進んだ。強豪・男子バレー部のマネジャーを務めたことが転機となった。部員が飲むプロテインの準備など裏方として支えるうち、スポーツと栄養学の関係に興味を持った。

 女子栄養大(埼玉県)に進学すると「日本中の全ての人を健康にしたいとの野望が芽生えた」。04年に管理栄養士の国家試験に合格。病気は肥満から派生するケースが多く「やせたいと思う人の手助けをしよう」と健康食品メーカーに就職した。

 6年ほど働いたが「いくら良い食品を作っても買った人しか健康にできない」と栄養士の卵を育てる学校法人に転職。「一人で日本中の人を健康にするのは難しいから、学生たちに自分の思いを植え付けたかった」と笑う。

 30歳で一時休職し、アイルランドの料理学校へ留学した。異文化に刺激を受け「食をより広い視野で捉えたビジネスがしたい」と起業。拠点とする東京は、多様な人材や飲食店が集まり「食のトレンドを肌で感じられる」と刺激を受けてはビジネスに生かす。

 つくりたい未来は、年齢にかかわらず誰もが思うように生きられる人生。健康は全ての基盤であり「楽しみながら食や栄養の知識を学び、健康になれるような仕組みや輪を構築したい」と夢の実現へ挑戦を続ける。


 緑川 涼佳さん(みどりかわ・さやか)
 不来方高普通科外国語学系-女子栄養大栄養学部卒。東京の健康食品メーカー勤務を経て、2010年に都内の学校法人に転職。18年3月、Otavert(おたべーる)設立。41歳。紫波町出身。