ITで企業成長支援

 インターネットを活用し、企業の集客力向上を支援するエイビック(東京都港区)。創業者の市原創吾さん(36)は昨年6月、東証グロース市場へ上場を遂げた。「多くの企業の成長を支援し、日本の未来を良くしたい」と燃える。

 赤坂の超高層ビル・アーク森ビルにオフィスを構え、若い社員が生き生きと働く。主な業務はグーグルやフェイスブックの広告枠の活用支援などコンサルティング。顧客は中堅から大手企業まで幅広い。

 2018年3月に創業し、従業員は51人に拡大した。「仕事は、やったことのないことの連続。乗り越えるたびに成長を実感できる」とやりがいを感じる。上場を目指したのは、社会的信用を得ることで、事業拡大や有能な人材の採用につなげたいから。

 盛岡市で生まれ、花巻市で育った。水泳が好きで、小学生の頃、夢は五輪選手。中学時代は水泳部主将を務め、県大会で優勝して全国大会に出場した。当時の思い出は友達とイトーヨーカドーに行ったり、テレビゲームを楽しんだり。「起業するとは1ミリも想像していなかった」と笑う。

 花巻北高から青山学院大理工学部に進んだ。ネットビジネスがどんどん進展する時代。就職活動では「若い人が活躍している」のが魅力で、IT企業のサイバーエージェントに入社。27歳でネット広告を運用する部門の局長を務めるなど充実した20代を過ごした。

 ところが「リスクを取っても成長したい」と退職し、31歳で起業した。雑居ビルの小さなスペースで始動した初期は不安で眠れない毎日を過ごし「良き師や友に恵まれて乗り越えた」と感謝する。

 幼い頃に毎年、東京の親戚を訪ね「将来東京に出る」と決めていた。「日本中からバイタリティーあふれる人が集まり、活気がある」と刺激を受ける日々。半面で古里も大切に思う。経験を積み、将来は何らかの形で還元するつもりだ。

 社名はアルファベットで先頭の「A」と、景色(「Vi」sta)をつくる(「C」reate)の造語。「i」には、新しい景色の中に人が立つ様子もイメージした。

 京セラを世界的企業に育てた稲盛和夫さん(故人)の著書に感銘を受けた。「仕事を通じて終わりなき成長をしていくことが、生まれてきた意味だと思う」。気を緩めれば淘汰(とうた)される厳しい業界で、果敢に挑戦を続ける。


 市原 創吾さん(いちはら・そうご)
 花巻北高-青山学院大理工学部卒。サイバーエージェント勤務を経て、2018年3月にエイビック創業。36歳。盛岡市生まれ、花巻市育ち。