取材を通して出合った言葉が、心をつかんで離さないことがある。

 「幸せは自分の心が決めるもの」。大船渡市三陸町越喜来(おきらい)の村上カツさん(94)の言葉だ。1933(昭和8)年の三陸大津波と東日本大震災。2度の災禍に見舞われて、生まれ育った土地で生きることを選んだ。

 自宅をのみ込み、家族を奪った津波のことを聞いた。戦争の時代や先祖のこと、宝物のような家族との思い出も。全部が今の幸せにつながっていることを教えてくれた。朗らかに笑う姿がまぶしかった。

 わが身に立ち返れば、情けないことに既存の幸福の尺度に振り回されてばかりだ。他人と比べて自分の了見の狭さに落ち込み、目の前の出来事にせわしなく浮いたり沈んだりする。そんなとき、頂いた言葉がお守りみたいに心に響く。

 今月25歳を迎え、四半世紀を生きたことになる。支局生活も2年目。失敗ばかりでとても胸を張れたものではないが、「昨年よりましな自分になれたかな」と思っている。多くの出会いに恵まれたおかげだ。

 取材で相手が紡ぐ言葉はすべて、生涯をかけて獲得した知恵であり、人生の一部そのものだろう。自分はそのお裾分けを頂いている。きちんと血肉にしなければと思う。

(菅原真由)