【スイス・ジュネーブで川村公司常務】国際リニアコライダー(ILC)計画を長年推進する素粒子物理学界の重鎮、リン・エバンス氏(76)=英国出身=は20日、岩手日報社のインタビューに答えた。日本国内で誘致検討に年数を要している現状を踏まえ「私たちは今でもILCを日本で造りたい」と述べる一方「フラストレーション(いらだち)のレベルは100%に上がり、世界のムードは変わってきた。向こう1年で政治的進展がなければ、日本での計画はなくなるかもしれない」と言及した。

 エバンス氏はILC建設へ中心となって動いている国際推進チームの前身組織、リニアコライダー・コラボレーション(LCC)元代表で、現在も重要な役割を担う。発見されたばかりで性質がよく分からない素粒子・ヒッグス粒子を調べるため「(粒子を量産する)工場が必要だ。省エネルギーも求められ、ILCだけが目的を達成できる」と説明した。

 その上で岩手、宮城両県の北上山地(北上高地)は「地質が(建設に)適している」と強調。自身が2013年に本県を訪れた際に「候補地は北上山地に限る」と表明して9年たつが「ほかの場所をまだ検討していない。私たちは今でも造りたいからだ」と語った。

 一方で日本政府に対し「新しい委員会を設立しては、報告書を出すことを繰り返している。やりたいか、やりたくないかを言うためだけにこんなに時間を要するのか」と率直に疑問を呈し「以前は私が首相と会えたり高いレベルで議論できたが、今はなくなった。超党派の国会議員連盟の動きも後退している気がする」と受け止めた。

 世界の現状は「米国が当初、とても前向きな姿勢でサポートしてくれたが、日本からの具体的な提案がないため、諦めてきた感じ。世界のムードは変わってきた」とし「技術的な進展は大事だが、政治レベルの進展も大事だ。向こう1年で進展がなければ、日本での計画はなくなるかもしれない」との見方を示した。

 実現に向けて日本が取り組むべきことは「ホスト国になると約束する必要はない。『サポートしてくれる国があれば、私たちはホスト国になる』と言えば十分で、各国と本格的な話し合いに入ることができる」と提言した。

 インタビューはフランスとの国境付近にある欧州合同原子核研究所(CERN)で行った。大型円形加速器(LHC、周長27キロ)を有し、万物に質量を与えるとされる「ヒッグス粒子」を12年に発見したことでも知られる。