「これまでの歩みを知ることで地元に愛着や誇りを持ってほしい」。花巻支局に着任し、1年余り。郷土史を熱心に研究し、書籍として「形」に残す住民を取材する機会が多い。

 石碑研究や宮沢賢治との関わり、商店街の変遷など扱うテーマはさまざまだが、文章には地元を思う気持ちがあふれている。

 住民らが語った内容をまとめた「聞き書きいしどりや」を制作した花巻市の菊池邦雄さん(78)は、50年以上にわたって研究を続けている。「歴史を知る人が少なくなっている。それでも掘り起こしながら郷土史を残したい」。その思いに頭が下がる。

 地元愛に感服する一方で、関わる住民のほとんどが高齢者であることが気がかり。「今後を担う若者たちにもっと地域のことを考えてもらいたい」と切実に願う姿に胸が痛む。

 「特に何もないところだよ」。大学時代、県外出身の友人に「出身地はどんな所?」と聞かれた際、当然のように答えていた言葉だ。今となっては、十数年も暮らした地元の魅力や歴史を伝えられなかった自分を恥ずかしく思う。

 連綿と受け継がれてきたコミュニティーをどう残すか。当事者意識を持ちながら、持続可能なまちづくりのために奔走する人々を丁寧に取材し、関心を集める発信をしたい。

(大友亮)