正念場。手元の広辞苑には「歌舞伎・浄瑠璃で主人公が性根を発揮させる最も重要な場面」とある。転じて、ここぞの大事な局面-という意味だ。

 東日本大震災発生から11年が経過した3月以降、陸前高田市の記事の見出しで2度この言葉が載った。

 一つは地元消防団の現状を伝える記事。再建されたまちの消防団が新しいコミュニティーといかに連携し、活動を維持するか。そんな視点での取材だった。

 住民の流出による担い手不足で活動は厳しさを増す。屯所は再建されたが団員の居住地がばらばらになり「地域に根差した消防団」の模索が続く。団員たちは憂い、それでも真剣に将来を考えていた。

 もう一つは、アバッセたかた開業5周年の記事。かさ上げ地初の営業施設として船出し、周辺の再建店舗も増えたが、新型コロナウイルス禍で苦境にある。そんな中、ある商業者は「ここからが本当の勝負」と奮起を誓った。

 いずれの関係者も覚悟と将来への強い思いを持って前に進んでいる。今と真剣に向き合うからこそ「正念場」という状況は生まれるのだと思う。

 ハード整備が終わっても復興にゴールはない。正念場はさまざまな局面で存在する。復興の主役である住民たちは明日もあさっても一歩ずつ歩みを進める。

(向川原成美)