極夜の空、陰影美しく 月刊南極支局

【昭和基地で国際部・菊池健生】太陽が一日中昇らない「極夜(きょくや)」が続く6月の南極・昭和基地。夜は長いが、4時間ほどは薄暮の明るさとなり、空は水平線下からの陽光で美しく染まる。わずかな残光を頼りに、第63次南極地域観測越冬隊(沢柿教伸(たかのぶ)隊長)は野外での作業に励む。
頭上の薄い青から、水平線近くの濃いオレンジ色へと変わるグラデーションの空に、氷山のシルエットが浮かぶ。午前10時半ごろ、一瞬、水平線から光がこぼれそうになるも太陽は顔を出さない。
基地近くの海氷上では、隊員がそりの移動と整理作業の真っ最中。雪上車が忙しく動く様子に、岩手で見た夕暮れに家路を急ぐ子どもたちを思い出した。
最高気温は氷点下10度を下回るのが当たり前になってきた。冷たく強い風が吹きつけ、羽毛服を着ていても容赦なく体から熱を奪っていく。暗く寒い極夜。それでも水平線下から届く光を感じるだけで、太陽のありがたみを感じる。
7月中旬まで太陽はお預けだが、成層圏に形成される特殊な雲やオーロラといった楽しみな現象も待っている。「明るい時間にどれだけ仕事ができるかが大切」と任務に当たる設営隊員の桜庭健吾さん(26)=日立製作所、茨城県日立市出身=も「朝焼け、夕焼けのような幻想的な時間も写真に収めたい」と極地の日々を大切に送る。
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第63次南極観測越冬隊の活動は、岩手日報本紙をご覧ください。