事件、事故の遺族にどう向き合うべきか。4月の着任早々の取材で、深く考えさせられた。記者の取材活動は直接会って、話を聞くことが基本だ。ただ、遺族の悲痛な思いに接し、向き合い方を自らに問い続けている。

 遠野市内の40代男性が、釜石市唐丹町の小白浜漁港片岸分港で車両に乗って海に転落し、亡くなった。4月下旬、交通死亡事故として扱うと警察が発表した。

 遺族のもとに伺った。胸中を想像するだけで心が痛む。男性と2人で暮らしていた70代の母親は、気丈に思い出を話してくれた。男性の仕事のこと、友人に恵まれ温泉に行く計画を立てていたこと。線香をあげ、じっと耳を傾けた。

 「死んだと思っていない感じだから、悲しんでいられない」との言葉に複雑な心境を垣間見た。「息子は犯罪者じゃないから」。顔写真を手にする姿。生きた証しを残したい-。思いを託された気がした。

 遠野署管内では昨年6月、遠野市宮守町の国道107号でワゴン車が電柱に単独衝突し、運転手の50代男性が亡くなって以降、交通死亡事故は起きていない。だが、同署に残る記録では、元日からのカウントで1年間交通死亡事故ゼロの達成は一度もない。市民の安全を守る一助になる記事を書くことは、使命だと強く思う。

(菊池宗矩)