「吃音も個性、たくましく」 及川彩子さんのMLBリポート

28日、ブルージェイズのジョージ・スプリンガーが一人の野球少年と再会した。
「俺との約束を守っているか」
その言葉に8歳のブランドン君が頷く。
2人は吃音症という共通点を持つ。
野球一家で育ったスプリンガーは早くから非凡な才能を見せ、高校では1年生からレギュラーに。しかし吃音を理由にいじめられ、転校や落第を繰り返した。
大学卒業時にアストロズに入団。
「大リーガーになってやっと吃音の自分を受け入れられた」
アストロズ時代にユース吃音協会の大使になり、以来、同じ症状を持つ子供達を支援する。
元々スプリンガーのファンだったブランドン君は3年前、スピーチセラピーでスプリンガーも吃音症であると知った。そして試合観戦の際に「スプリンガーの大ファン。僕も吃音症なんだ」というサインを持参。それを目にしたスプリンガーがブランドン君に話しかけ二人は出会った。
母ジェニファーさん(42歳)は「彼のような選手が吃音症の悩みを共有し、子供たちに寄り添ってくれるのは大きな力になる」と感謝する。
ブランドン君は地元のリトルリーグチームでショートを守る。目標は「スプリンガーのようになること」と話す。
2人は現在も吃音症を抱えている。
「つらいこともある。でも吃音も個性。逞しく生きてほしい。約束だ」
彼らの友情と約束はこれからも続いていく。
及川 彩子(おいかわ・あやこ)さんPROFILE

米ニューヨーク在住。陸上、サッカー、ゴルフなどを幅広く取材するフリーライター。45歳。北上市出身。
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