南極はもうすぐ「極夜」 越冬隊員、陽光を惜しむ

【昭和基地で国際部・菊池健生】もうすぐ「長い夜」が始まる。第63次南極地域観測越冬隊(沢柿教伸(たかのぶ)隊長)が運営する南極・昭和基地は今月末、太陽が全く昇らない「極夜」に突入する。隊員は貴重な明るい時間を狙って野外で活動。陽光を惜しむように、長い影が雪面に伸びる。
風のない5月の昼下がり。東オングル島の基地主要部から約2・5キロ離れた西オングル島を隊員たちが歩く。太陽が最も高くなる時間帯でも夕方のよう。地平線近くを水平に移動し、白銀の世界を照らす。
穏やかな天気だが、気温は氷点下約20度の極寒。暖かさを求めるには少し頼りないが、約8キロを歩く隊員にとって、光はあるだけでありがたい存在だ。
太陽が約1カ月半昇らなくなる極夜は、地球が地軸の傾いた状態で太陽の周りを回るため起きる。南極は高緯度にあり、真冬は太陽が地平線の下にずっと潜った状態に。逆に夏の間は太陽が沈まなくなる。
3度目の越冬となる沢柿隊長(55)=法政大、富山県上市町出身=は「地球が傾いて自転していることを感じられる貴重な場所」と説明。隊員は天体としての地球を意識しながら、長い夜を迎えようとしている。
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第63次南極観測越冬隊の活動は、岩手日報本紙をご覧ください。