原発廃炉に関心

 東日本大震災から11年を迎えるのを前に、岩手日報社など読者とつながる「オンデマンド調査報道(JOD)」パートナーシップに加盟する全国の地方紙は、被災地「福島・東北」について知りたいことや原発政策の在り方などを聞くアンケートを実施した。福島について関心がある項目は「原発事故の廃炉作業」が43・0%と最多を占めた一方で、震災への関心は昨年の同様の調査に比べ低下傾向にあった。原発政策についても積極的な脱原発を求める意見の割合が減った。

積極的政策望む 読者アンケート

 アンケートは協働企画として昨年から取り組む「#311jp」の一環。17紙が無料通信アプリ「LINE」(ライン)や紙面で呼び掛け、2月2~11日に実施。回答数は45都道府県から2636人だった。

 その結果、福島県について関心がある項目は、最多だった廃炉作業に続き「地震、津波からの生活の復興状況」(23・3%)、「避難区域の現状」(12・4%)―などだった。

 2021年も協働企画として原発・エネルギー問題(回答数6248人)、防災(同1699人)についてアンケートした。今回も一部、同じ質問を設定し、21年分を参考値として比較した。

 東日本大震災への関心度を6段階で聞く質問では、最も関心度が高いとしたのは21年が52・9%だったのに対し、今回は30・5%にとどまった。

 

 今後の原発政策の在り方については「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」が35・4%と最多だったが、21年比で7・7ポイント低下した。逆に原発活用を容認する回答項目の合計は21年比で9・3ポイント増えた一方で、ハザードマップ(災害予測地図)を見たことがあるかとの項目については「内容を理解している」37・3%、「見たことがある」52・6%。21年比でほぼ同じ割合となった。

 アンケートは多様な意見を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。

 

現状追認は問題

 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話 今後の原発政策について「積極的な脱原発」を望む回答が減っている。全国で再稼働が徐々に進む一方で、政府は原発活用について本格的な議論を避け続けている。既成事実が積み重なり、現状を追認する国民が増えていくのは良い状態ではない。「分からない」との回答増も気になる。気候変動対策で原発を活用すべきか悩む人が多いのかもしれない。大事故が発生しない限り、今後もこの傾向が続くのではないかと心配している。

 一方、福島について最も知りたいことが「原発の廃炉作業」だった。これは逆に、メディアからの発信が減ってきていることも影響していないだろうか。メディアがそれに応えていくことで、原発政策に対する議論も活性化できるはずだ。


まち再生へ住民が力 陸前高田中心部の今

山を削り造成した陸前高田市気仙町今泉地区の高台団地(手前)。中央の気仙川沿いはかさ上げしたが空き地が広がる=2月25日(本社小型無人機から撮影)

 連携プロジェクト「#311jp」の読者アンケートには全国から「高台移転した被災地の現状はどうなっていますか」との質問が複数寄せられた。津波で甚大な被害を受けた陸前高田市中心部は浸水域のかさ上げと高台移転でまちの再生を進めた。1年前に宅地の引き渡しが終わり、住宅新築もほぼ一段落した。津波災害への安全性は高まったが、町内会ができていない地区もあるなどコミュニティー再構築は途上だ。住民流出でかさ上げ地には多くの空き地が残り、将来への道のりは平たんではない。

 名勝・高田松原や「奇跡の一本松」を眼下に望む同市気仙町今泉地区の高台。3年前に新築された気仙小の周囲には真新しい一戸建て住家が並ぶ。高台の下には、浸水域を最高で16メートル盛り土したかさ上げ地が広がる。走る車は少なく、周辺は空き地が目立つ。

陸前高田市気仙町で高さ約120メートルの山を約45メートルまで削る高台造成工事(手前)。崩した土砂は中央の巨大ベルトコンベヤーで運び、気仙川対岸の高田町(奥)のかさ上げに使った=2014年3月(本社特別機から撮影)

 今泉地区は同市を南北に流れる気仙川の西岸。藩制時代は気仙地方の政治の中心地として栄え、醸造業など伝統産業が営まれてきた。住民同士の結び付きも強い土地だったが、津波で約600戸のうち592戸が被災した。

 対岸の高田町も大きな被害を受け、市は両地区で土地区画整理事業を導入。生活を続ける人たちの安全確保を最優先した。今泉の山を切り崩し、総延長約3キロの巨大ベルトコンベヤーで約500万立方メートル(東京ドーム約4個分)の土砂を高田町に運び、1年半かけ浸水域に盛った。切り崩した後の土地も含め両地区の計約300ヘクタールに計1464戸分の宅地を造成した。

 同市は津波で家屋のほぼ半数の約4千世帯が全半壊した。震災直前の人口約2万3千人のうち死亡・行方不明は1759人に上る。

 

 気仙川近くに住んでいた鈴木英俊さん(67)は同居する妻とその両親を津波で亡くした。4年前に今泉の高台に新居を構え今は1人で暮らす。「津波の心配がなく防災面では安心だ。当時も高い場所に家があれば3人を守れていたかもしれない」。安心感と後悔の念が複雑に交錯する。

 高田、今泉地区は造成規模が大きく整備は長期化した。時間を費やす間に住民が流出し、今泉地区に暮らすのは震災前の半数以下の約250世帯。無人区を除き6行政区が新たに設けられたが、うち三つはまだ町内会を発足できていない。

今泉地区コミュニティセンターで開かれた愛宕下町内会の設立総会。震災から10年以上たち、コミュニティー再構築へ一歩を踏み出した=2021年12月、陸前高田市気仙町

 気仙小周辺の約50戸で構成する愛宕下町内会は2021年12月に発足。かつての町内の住民が入り交じって転居し、地区外から来た人もいる。ゼロからのコミュニティーづくりで公民館建設や自主防災組織の立ち上げもこれから。村上諭会長(76)は「課題はこれからも出てくるだろうが、助け合っていくしかない」と前を向く。

 気仙町で約900年の歴史を誇り、数台の山車をぶつけ合う「けんか七夕」は、復活した。新型コロナウイルス禍で20、21年は中止となったが熱意ある住民らが存続へ汗を流す。かつての恒例行事だった町内会対抗の運動会もいつの日か再び開催できるはずだ。

 今泉地区コミュニティ推進協議会の菊池満夫会長(69)は「住民の輪をつくり、機運を醸成してまとまりをつくり、今泉の歴史をつなげていかなければならない」と決意する。


「事前復興」が重要 平時から地域の将来議論

 岩手県沿岸部は東日本大震災の津波で広範囲が浸水し安全確保のため高台移転が進んだ。造成後の住宅再建が落ち着きつつある今、専門家は津波以外の災害に対する防災意識の低下を懸念。再び起こり得る大災害への備えとして「事前復興」の重要性も強調する。

 岩手県沿岸部12市町村のうち、陸前高田市、釜石市など南部を中心とした7市町村で土地区画整理事業と防災集団移転促進事業による高台移転が行われた。107地区で計7001区画が造成され、2021年1月までに地権者への引き渡しを完了した。

 県内自治体の復興計画策定に携わった岩手大農学部の三宅諭教授(49)=都市・地域デザイン=は高台移転による安全性の担保を評価しつつも「住民は津波への意識が高かった分、それ以外の災害への意識が十分ではない」と指摘する。

 震災発生後、全国的に集中豪雨が頻発。移転先の高台に調整池を造り、斜面崩落の安全対策も施しているが、三宅教授は「地形バランスが崩れていることも考えられる。計画雨量を超える雨が降れば、低地部での内水氾濫の危険性も高まる」と警鐘を鳴らす。

 有事の備えとして重視するのが「事前復興」の取り組みだ。発生前に防災面の危険性や地域課題、将来のまちづくりについて住民が話し合っておくことが必要とし「平時からしっかり話し合える態勢があれば、それが下地になる。住民主体での取り組みが理想だが、行政や専門家、NPOといった団体などのサポートも重要だ」と呼び掛ける。


主体的な取り組みを 記者の目

 東日本大震災発生から間もなく11年となり、被災者の生活再建や事業所再建、公共施設や橋・道路といったハード面の復旧はほぼ完了した。現在は「目に見えにくい課題」と向き合う段階に入り、高台移転に伴うコミュニティーの再構築や維持の問題もその一つだ。

 岩手県沿岸部は元来住民のつながりが強い地域だが、震災後のコミュニティー再構築には労力を費やした。中心となるべき人材が犠牲になったり、まちづくりの長期化が住民の流出を生じさせるなど現実は厳しかった。次の災害に備えるため、平時から膝を突き合わせて即応できる土台をつくっておきたい。

 高台移転で津波災害への安全性は高まったが、それが災害への慢心を招いては本末転倒だ。一日中高台にいるとは限らない。津波の際はどこでも高台避難する意識付けや、事前復興の取り組みも、人ごとにせず主体性を高めることに主眼を置いて進めたい。

 (陸前高田支局・向川原成美)