2022.03.13

命守るプレハブ建築技術 南極から見るSDGs

自身が手掛けた自然エネルギー棟の前に立つ堀川秀昭さん=南極・昭和基地
自身が手掛けた自然エネルギー棟の前に立つ堀川秀昭さん=南極・昭和基地

 日本の南極観測は、建築技術の挑戦と進化抜きでは語れない。65年前に建てられた昭和基地開設時の4棟は、日本初のプレハブ建築。容易に建てられ、過酷な自然に耐えるという困難な条件から生まれた。源流とした工法は普及し、11年前に発生した東日本大震災の仮設住宅として建てられ、県内でも被災者の生活を支えた。環境に適応し、命を守るための挑戦は、人類の未来をも左右する。

 流線形のデザイン、太陽熱を集めるパネル。ひときわ目を引く昭和基地最大級の建造物が「自然エネルギー棟」だ。「大工だから、自分の手掛けたものには愛着が湧くね」。10年前、建設に携わった63次南極地域観測越冬隊の建築・土木隊員、堀川秀昭さん(49)=ミサワホーム建設、川崎市出身=が見つめる。

 雪上車整備など多くの作業を行う棟は2階建て、延べ床面積840平方メートル。木質パネルを組み合わせて建設した。流線形は風を後方に逃がすように設計。壁面パネルは太陽光で暖気をつくり、室内暖房として活用するためにある。

 再生可能エネルギー使用、省エネ、過酷な自然への耐性と、建築に時代が求める要素を網羅した建造物。こうした建築技術の挑戦は、65年前のプレハブ4棟から始まった。

 当初の設計は、日本建築学会の南極建築委員会が担った。日本は国際社会に「上陸不能地域」の観測を任されたため、現地情報がないまま検討を進めた。作業する隊員は建築の素人。期間や物資も限られる。

 そこで、国内で加工した木質パネルを現地で組み立てるだけというプレハブ工法を採用した。建物は過酷な風雪に耐え、隊員を守り、観測を支えた。1次隊が建てた旧主屋棟は現存し、強さを示している。

 短期間で均質の建物を施工できるプレハブ工法はその後、国内で普及した。用途は幅広く、災害時の仮設住宅としても活躍する。

 高断熱や高気密、耐久性、施工しやすいなど南極で求められ、進化した建築技術は、国内の建物にも還元される。災害に強く、新技術の産業化につながる歩みは「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に多く合致する。

 「家は、命を守る存在でなくてはならない」と堀川さん。各国で激甚化する自然災害を念頭に「地球で最も厳しい環境の一つの南極で得た知見が『強い家』を造る上で生かされる」と未来を見据える。

(昭和基地=報道部・菊池健生)

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 詳報は、3月13日付の岩手日報本紙をご覧ください。

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