今も続く、福島再生

 岩手日報社など読者とつながる「オンデマンド調査報道(JOD)」パートナーシップに加盟する全国の地方紙は、連携プロジェクト「#311jp」で東日本大震災の被災地「福島・東北」について知りたいことを聞くアンケートを実施した。「福島県の今について最も関心があること」の質問では、津波からの復興状況や、東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域の現状を知りたいとの声が多く寄せられた。震災発生から11日で丸11年。福島民報社が「福島の今」を取材した。

地震・津波からの復興状況

水揚げ回復、険しい道

福島県内初の震災遺構として整備された浪江町の請戸小。太平洋を望む沿岸にあり、東日本大震災では津波が押し寄せた(小型無人機で撮影)

 東日本大震災で福島県では最大震度6強の揺れを観測した。福島県内3地方のうち太平洋沿岸の「浜通り」には大津波が襲来し、多くの人命が失われた。須賀川市の農業用ダム決壊、白河市の大規模土砂崩れなど内陸の被害を含めた死者(直接死)は1605人、住宅被害は全半壊約10万棟をはじめ約24万棟に上り、海岸堤防(防潮堤)や港湾・漁港、道路、橋などにも甚大な被害が出た。

 防潮堤や港湾・漁港、河川など災害復旧の対象となった県土木部所管の2158カ所のうち、今年1月末現在で2144カ所(99%)が完了。防潮堤は事業延長約6万9千メートルのうち、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の一部を除く約6万7500メートルで復旧し、高さも7・2メートルまたは8・7メートルにかさ上げされた。

交流人口拡大へ注力

 地震・津波被災者向けの災害公営住宅は計画された約2800戸全て、同原発事故の被災者向けは約4750戸が完成した。津波被害を受けた集落を高台や内陸に移す防災集団移転促進事業は相馬市、南相馬市など7市町で計画され、移転先の造成などが完了し、被災者は新たな生活を始めている。

 復興の加速化に向け、人や物を運ぶ交通網の整備も進んだ。浜通りを南北に貫く大動脈の常磐自動車道が2015年に全線開通し、20年には同じく南北を結ぶJR常磐線が全線再開した。21年には浜通りと内陸側の「中通り」を県北部で結ぶ横軸の東北中央自動車道「相馬福島道路」が開通した。

 インフラや交通網などハード面の復旧が進む一方、生業の再生や記憶の風化が課題となっている。

 原発事故の発生後、漁業では市場の評価を調べるため魚種や海域を制限する福島県漁連の「試験操業」が長く続いた。沿岸漁業の水揚げ量は試験操業を終えた21年でも4976トンと震災前の約2割にとどまる。国などが主導している再生可能エネルギーの導入やロボットといった新産業の育成も依然として道半ばだ。

 逆境を好機に変える一手として、福島県などが力を入れているのが交流人口の拡大だ。復興の現状に触れてもらう旅を「ホープツーリズム」と銘打ち、教育旅行や企業研修向けの周遊コースやツアーの情報発信に努めている。

 20年に双葉町に開館した東日本大震災・原子力災害伝承館や、21年に浪江町で公開が始まった震災遺構の請戸小など訪問の中心となる施設の充実を追い風として、21年度の旅行者は4月から11月までの速報値で約6500人に上った。県観光交流課の担当者は「家族や友人など少人数向けのプランづくりや受け入れ態勢の充実を急ぎたい」と意気込んでいる。

 

 ホープツーリズム 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に見舞われた福島県の復興の歩みや現状を知ってもらう「学びの旅」を指す。「福島のありのままの姿(光と影)」を「見て」「聞いて」「考える」ことで、震災・原発事故の教訓を自分事と捉えてもらう。交流人口拡大や風評・風化対策を目的に、県が2016年度から力を入れ始め、内堀雅雄知事が積極的にアピールしてきた。福島県観光物産交流協会などがツアー商品や周遊コースの企画・運営に当たり、参加者は年々増加傾向にある。児童生徒の教育旅行や企業・団体による視察研修をはじめ、個人旅行など多様な形態がある。


原発事故避難区域の現状

大熊町、葛尾村の一部区域 今春にも避難指示解除

福島県大熊町の特定復興再生拠点区域に掲げられている看板

 東京電力福島第1原発事故から11日で丸11年となる現在も、福島県内の7市町村に、空間放射線量が高いまま居住が制限されている「帰還困難区域」がある。福島県の沿岸地域「浜通り」にある富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘の6町村は、住民の帰還に向けた環境を整備する「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」を帰還困難区域内に設け、除染やインフラ整備を進めている。このうち大熊町と葛尾村は、6町村のうち最も早い今年「春ごろ」の解除を目指している。

 国が設定している復興拠点の避難指示解除の要件は①空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下になることが確実②日常生活に必須なインフラや生活関連サービスがおおむね復旧③県、市町村、住民との十分な協議-の3項目。各町村は除染、インフラ整備を進めるとともに、第三者による除染検証委員会を設置し、住民が安心して帰還できるよう線量の測定や評価を進めている。

 解除日は、除染検証委員会による検証結果の報告、住民への説明などを経て、国と県、地元自治体で協議し、政府の原子力災害対策本部が決める。

 第1原発立地町の一つである大熊町は、2月下旬に解除に向けた住民説明会を予定していたが、新型コロナウイルスの変異株オミクロン株による感染急拡大で延期。住民説明会は解除要件の一つである「住民との協議」の場として大切な場であり、町は開催に向けて感染状況の推移を注視している。

 一方で、住民帰還を円滑に行うため、避難指示が出された区域で禁止されている宿泊を特例的に認める「準備宿泊」が葛尾、大熊、双葉3町村で始まっている。帰還を考えている住民が自宅に泊まりながら、古里での生活再開に向けた準備をしている。原発事故の被災地への住民帰還や今後のまちづくりに向け、最初の解除となる大熊町と葛尾村の動向が注目されている。

 復興拠点は帰還困難区域の一部で、政府は昨年8月、復興拠点から外れた地域の帰還・居住に向けた避難指示解除に関する対応方針を決定した。住民の帰還の意向を確認し、2024年度を目標に除染を開始するとしており「2020年代をかけて『意向確認』『除染』『避難指示解除』」の工程を複数回繰り返す方針だ。

 これに対し、復興拠点を抱える町村からは「住民の意向に基づいて除染すれば、まだらになってしまう」「全面解除には遠く及ばない。解除されるエリアが小さくなってしまう」と懸念(けねん)する声も上がっている。

 

 帰還困難区域 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の避難指示区域のうち、2012年3月末時点での年間被ばく線量が50ミリシーベルト超とされた区域。7市町村に計約3万3700ヘクタール残り、原則立ち入り禁止。帰還困難区域のうち、住民の居住再開を目指して除染やインフラ整備を進める特定復興再生拠点区域(復興拠点)が6町村の計2747ヘクタールに設置され、22年春以降の住民帰還に向けて除染やインフラ整備が進められている。