1月16日未明、東日本大震災以来となる津波警報が沿岸部に発令された。サイレンや避難を呼び掛ける防災行政無線に当時の感覚がよみがえり、住民と同様に緊迫した時間を過ごした。

 避難所や高台に避難した人々は不安そうな様子で、宮古市田老の災害公営住宅で暮らす堀子朝子さん(82)は「万が一を考えて避難した。震災の被害や恐怖を思い出して胸が苦しい」と言葉を絞り出した。

 一方で、海外の海底火山噴火による津波という特殊事例に新型コロナウイルス禍、真冬の深夜という要因が重なり、避難をためらった住民は多かった。沿岸12市町村の避難指示対象4万7306人に対し、避難者は約4%にとどまった。

 高台での車中泊や親族宅への避難も加味すれば実際はもっと多いかもしれないが、津波警報の結果としては心配な数字だ。私自身も各地の状況確認のため海沿いの道を走行しようとし、気の緩みを実感した。

 今後も巨大地震津波のほか、温暖化による集中豪雨の頻発などが予測されている。災害はこちらの都合など考慮してくれない。

 間もなく震災から11年。この機会に当時の惨状を思い出してほしい。命が助かることが何より重要だ。災害の犠牲者、大切な人を失い悲しむ人々がこれ以上増えないよう早期避難という鉄則を再度胸に刻みたい。

(刈谷洋文)