2022.01.09

流れ出す氷河に迫る 熱水掘削し過程観測、氷床融解予測に活用

氷河の底面を目指し、先端から高圧の熱水が噴射されるチューブを慎重に延ばしていく観測隊員。約550メートル下の底面に達した=6日
氷河の底面を目指し、先端から高圧の熱水が噴射されるチューブを慎重に延ばしていく観測隊員。約550メートル下の底面に達した=6日

 【南極大陸で報道部・菊池健生】第63次南極地域観測隊(牛尾収輝隊長)は南極・ラングホブデ氷河を約550メートル熱水掘削し、地盤に到達した。南極大陸の氷床が氷河となり、海に流れ出す過程を調べるため実施。氷河が地盤の上を滑る環境を直接調べることができる。海に流れ出た「棚氷」上でも、海面まで掘削する予定。直接観測で得られたデータを解析し、氷床融解の将来予測に生かす。

 昭和基地から南に約20キロの同氷河で掘削を行っているのは、北海道大低温科学研究所の杉山慎教授(52)=雪氷学、愛知県春日井市出身=ら3人が中心。6、7の両日は、氷河河口部から約5キロ内陸側で実施した。

 先端から約80度の高圧熱水が噴射されるチューブを使い、時速20~60メートルのペースで氷を掘り進める。最近は曇りがちだったが、掘削中は一時青空に。久しぶりの陽光を受けながら、隊員たちは黙々と観測に励んだ。

 約14時間で約550メートル下の地盤に到達すると、隊員たちはほっとした表情。穴の中を撮影し、氷の温度や水圧を測る機器を設置した。氷河の流動速度や氷底面の滑りやすさなどに迫る観測は5カ所を予定し、1月末まで続ける。

 杉山教授らの研究チームは2018年にも同氷河先の棚氷で観測。氷が解けるよりも1度前後暖かい水が、棚氷の下に流れ込む様子を直接観測した。データ解析で同氷河の底面が海水で毎年1メートル以上解けていることも分かっている。

熱水掘削で開けた穴の内部=深さ500メートル付近(北海道大低温科学研究所提供)

 今回の観測は、氷河と地盤の接地域で初めて実施。より多くの氷が海に流れ、南極氷床が今後縮小しないかが懸念されている。共同研究で行う海洋観測のデータと合わせ、氷床融解の将来予測に役立てる。南極での氷河底面の観測は例が少なく、熱水掘削は世界でも限られたチームのみが実施している。

 杉山教授は「氷河が地盤の上をどれだけ滑っているのかが分かる生データが取れれば、氷河が海に流出していくまでの仕組みについて、新たな知見を打ち出せる」と期待する。

 

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