地域の大人が守り育てている-。そんなことを強く感じる夏だった。セミが鳴きじりじりと暑い昼下がり、子どもたちの楽しげな声が寺に響いていた。

 濃いあめ色の廊下で繰り広げられた熱き雑巾がけレース。カメラを構える私に追突しそうな勢いでゴールに滑り込む子どもたちのはしゃぎように頬が緩んだ。

 大槌町公民館吉里吉里分館(芳賀博典分館長)は今夏、地元の小学生向けに夏休みイベントを初企画。テント設営やまき割り、座禅など、日々異なる体験を10日間にわたり提供した。

 夏休み中の公民館開放を町から頼まれた芳賀分館長(70)が「せっかくなら思い出づくりを」と地域力を結集。大人たちが多様な「先生」となった。

 行事中止が相次ぎ、子どもたちの無邪気な姿を見たのは久しい。時代とともに娯楽が多様化してもなお、五感に刻まれる体験の場は大人の支えがあってこそ得られるものだと思う。

 秋サケの不漁が続く中で守られようとする文化もある。「なっても(何でも)試してみる」と言うのは町内の鮮魚店主。生産の進む養殖サーモンでの新巻きザケ作りに挑戦するという。

 「なっても」。時に苦境にあらがう精神が息づくようなこの言葉に、脈々と伝わる地域の底力を感じては頼もしく思う。

(加藤菜瑠)