2021.09.23

不動産相続直後にDMなぜ? 登記の受付帳開示で把握

男性宅に届いた不動産業者からのDM(画像の一部を加工しています)
男性宅に届いた不動産業者からのDM(画像の一部を加工しています)

 「父親が亡くなり、相続した土地・建物の登記を完了した途端、多数の不動産会社から『売却を検討しませんか』とのダイレクトメール(DM)が来ました」「登記情報は誰でも閲覧可能とは知っていますが、タイミングが良すぎます。情報が筒抜けなのでは」。そんな疑問の声が、京都新聞社の特命取材班に寄せられた。土地や建物は無数にあるのに、どうやって個別の相続情報を素早く把握しているのだろう。調べてみた。

 疑問を寄せたのは、京都府南部在住の50代男性。亡父の土地を相続することになり、今冬に司法書士に相続登記をしてもらった。司法書士から登記完了の報告を聞いた4日後、男性宅に2通のDMが届いた。翌日にも1通。1カ月ほどたつとDMの差し出し元は十数社に及んだ。全て不動産会社だった。

 「相続のタイミングで、不動産売却をご検討いただけないでしょうか」「法務局で調べて、お手紙を送りました」。いずれの文面からも、男性が土地・建物を相続した事実を把握していることがうかがえた。

 男性は「登記簿は法務局で見られることは知っている」とした上で「なぜ『変更された登記』をピックアップして検索できるのか。家族や親族を亡くした直後に、多量のDMが来るのは正直腹立たしいし、個人情報の観点からいかがなものか」と疑問視する。

 男性の言う通り、土地・建物の所有者や面積などが記された登記簿は、法務局で誰でも有料で閲覧できる。私たち新聞記者も取材で他者の登記簿を取得することがあるが、「住所」を指定しないと閲覧できない。膨大な登記から、一つ一つの土地の動向を速やかに把握するのは困難に思える。

 では、不動産会社は、どうやって相続情報をつかんだのか。男性宅にDMを送った京都市内のある不動産業者に聞いてみた。答えは「法務局で行政文書を開示してもらうんです」。どんな文書があるのか。「相続や売買の申請があった土地の一覧が記された文書で、情報開示請求で見られます。当社は毎週請求していますよ」という。

 登記簿を管理する京都地方法務局に聞くと「それは不動産登記の受付帳のことだと思われます」。受付帳は、不動産登記規則に基づき、すべての法務局・支局に存在する。売買や相続、抵当権設定などの申請があった土地・建物が全て記載されている。

 実際に受付帳を開示請求してみると、請求から10日後に、変更された登記の一覧が公開された。「所有権移転遺贈」「登記名義人の氏名変更」といった変更理由も明記されていた。

 この文書により、不動産業者は相続された土地などをすぐ把握し、DMを送っていたわけだ。京都地方法務局によると、京都府内で受付帳を対象にした開示請求は、2019年度に約3900件あったという。

(京都新聞社提供)

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