2021.09.02

中国に秋葉原電気街? コピー商品で急成長

世界最大の電気街・華強北にあるビル「華強電子世界」=中国広東省深セン
世界最大の電気街・華強北にあるビル「華強電子世界」=中国広東省深セン

 「中国に、東京の秋葉原をモデルにした巨大な電気街があり、高性能なコピー商品が売られていると聞いた。実態を知りたい」。西日本新聞(福岡市)の特命取材班に福岡県の読者から調査依頼が寄せられた。

 「コピー天国」として知られてきた中国。国際社会の懸念を払拭して外資を呼び込む狙いもあり、近年は知的財産権保護の強化に政府を挙げて取り組んでいるはず…。現地を訪ねてみた。

 IT企業や電子製造業者が集まり、中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深セン(しんせん)。世界最大の電気街・華強北(ファーチャンベイ)はその中心部にある。

 1万を超すデジタル関連企業や問屋、小売店が集まり、「あらゆる電子部品が取引されている」と言われる華強北。ひときわ目を引く6階建てのビル「華強電子世界」に入ると、スマートフォンや小型カメラなどの電子機器やパーツの専門店がひしめいていた。

アップル社製無線イヤホンのコピー版が山積みされた華強北の小売店=中国広東省深セン(写真の一部を加工しています)

 館内のあちこちに、米アップル社の無線イヤホン「エアポッドプロ」にそっくりの品物が山積みされている。日本で買えば約3万円の商品だ。箱を手に取って眺めていると、女性店員が「それは150元(約2600円)。性能が高いこっちは260元(約4400円)。音質は悪くないよ」と試聴を勧めてきた。

 試してみると、周囲の騒音を減らすノイズキャンセリング機能も、ある程度有効だった。関係者によると、2016年に初代(第1世代)エアポッドが発売されて以降、コピー版が続々と生まれ、本物さながらに「改良」が繰り返されているという。

 深センはかつて漁村だったが、改革・開放路線を打ち出した鄧小平(とうしょうへい)時代の1980年に経済特区に指定されると、香港に隣接する地の利を生かし、安価な電子部品や関連機器を製造する工業地区として発展。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、IT大手の騰訊控股(テンセント)、小型無人機ドローンの世界最大手DJIも深セン発祥だ。

 華強北は、深センの中心部に秋葉原を参考に開発され、電子産業の集積地として急成長した。成長力の源泉となったのが「山寨(さんさい)」と呼ばれるコピー商品。山寨は、中央の統制が及ばない「山中のとりで」という本来の意味から転じて偽ブランドを指すようになった。

 中国メディアによると、華強北産コピー版エアポッドの昨年の出荷数は、インターネット通販を含めて6億台を超えた。正規品の7倍以上の規模だ。米政府は「世界中で出回っている模造品の6割以上が中国由来だ」と非難する。

 知的財産権の保護は、習近平(しゅうきんぺい)国家主席が参加検討を表明した環太平洋連携協定(TPP)のルールの一つ。内需拡大を軸に世界経済ともうまく連携させる「双循環」戦略を推進する習指導部は、汚名返上に向けて、知的財産権の侵害への罰則強化を図っている。今年6月には、権利侵害への罰金などを強化した改正著作権法を施行した。

 華強電子世界などの館内には「偽造品の製造・販売を厳しく取り締まる」と書かれた横断幕やポスターが掲げられていた。ただ、販売員たちは、まるで自分と無関係の警告と思っているかのようにコピー版の売り込みに懸命だ。「これはアップル社製品の偽造品ではないの?」と尋ねると「違うよ。どこにもアップル社製とは書いてないでしょ」と即答した。

 「上に政策あれば下に対策あり」と言われる中国社会。いたちごっこはまだまだ続きそうだ。

(西日本新聞社提供)

※深センのセンは「土へん」に「川」

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