支局での取材は多様な体験の連続だ。特に経験したことのない出来事や景色に直面すると五感を鋭く刺激され、「またひとつ成長したな」と感慨を覚える。

 印象深いのは、5月に同行取材した旧水沢鉱山(北上市和賀町岩沢)のトレッキングツアー。かつて3千人が暮らし、栄華を極めた地。だが、閉山から約70年が過ぎた今は知る人ぞ知る秘境となり、許可がなければ立ち入れない。

 企画した同市の北上巣箱の深津咲奈(さきな)代表(31)の案内で、雨に打たれてやぶをかき分け、緑の山を登り、冷たい沢を下る。資源にならない鉱石が堆積した場所では、深津さんの「お宝が眠っていますよ」との言葉に燃え、小粒ながらもアメシストを発見。気分は終始、幼少期に胸を躍らせた探検そのものだった。

 記事では一端を伝えることしかできなかったが、注目すべきはその反響。翌日には早速、ツアーへの参加方法を尋ねる電話が相次ぎ、水沢鉱山と書かれた希少な旗を寄贈したいと申し出る男性さえいた。体験が共感を生んだ瞬間だった。

 新型コロナウイルス感染症拡大で、今夏も外出を控える家庭は少なくないだろう。だが、こういう時だからこそ現場で体感したリアルを伝えたい。アフターコロナを見据え、この地が備える魅力を発掘していくために。

(稲垣大助)