2021.04.29

片耳難聴者に理解を 会話時、周囲の配慮不可欠

片耳難聴を抱える京都光華女子大の高井小織准教授。「聞こえない左耳の方から話しかけられても気づかない時がある」と話す=京都市右京区・同大
片耳難聴を抱える京都光華女子大の高井小織准教授。「聞こえない左耳の方から話しかけられても気づかない時がある」と話す=京都市右京区・同大

 「片耳難聴(なんちょう)について、多くの方に広く知ってもらいたい」。京都新聞社の特命取材班に、近年発足した当事者団体からメッセージが届いた。片方の耳が聞こえづらい、もしくは全く聞こえない片耳難聴者。国内では30万人以上がいると推定されている。日常生活に大きな支障(ししょう)はないが、声のする方向が分かりにくいなどの不便がある。中には、声をかけられているのに気付かずに「無視をした」と誤解されるケースも。自身も片耳難聴者で、京都光華女子大医療福祉(いりょうふくし)学科(京都市右京区(うきょうく))で聴覚障害を研究する高井小織准教授(60)は「日常のコミュニケーションで悩みを抱えている人が多い」と話す。

片耳難聴者が聞き取りに困る例

 片耳難聴は一側性(いっそくせい)難聴とも呼ばれる。原因は不明なことも多い。先天的(せんてんてき)な理由やおたふくかぜの合併症、大人になってからの突発性のものなどさまざまだ。

 国による片耳難聴者数の統計はない。2019年8月に全国の専門家など10人が立ち上げた市民団体「きこいろ」では、新生児聴覚スクリーニングで約千人に1人の割合で発見され、後天的(こうてんてき)な原因も含めると国内で30万人以上がいると推計(すいけい)している。

 片耳難聴者は日常生活に大きな支障はないことが多い。聞き取れる音の大きさは、両耳が聞こえる人と片耳しか聞こえない人との間で、差がほとんどないためだ。障害者手帳の交付対象にはなっていない。しかし、個人差もあるが、▽聞こえない耳の側から話しかけられると気づかない▽音や声が出ている方向がわかりづらい-などの不便(ふべん)がある。

 高井准教授も小中学生時、話しかけられた友達に気づかずに「無視をした」と誤解された経験がある。今でも宴会(えんかい)で会話を聞き取るのは苦手だ。大学の初回講義(しょかいこうぎ)では学生に左耳が聞こえないことを伝える。その上で、学生には正面で話したり、手を振って発言したりするよう求めている。

片耳難聴者への配慮の例

 「きこいろ」には現在、当事者やその家族など約390人の会員がいる。高井准教授は副代表を務める。片耳難聴者を対象にした交流会や、保護者向けのレクチャーなどを全国の会場やオンラインで毎月開催してきた。ホームページでは、片耳難聴の原因や周囲の人ができる工夫も紹介している。

 片耳難聴者は聞こえづらい場面では、聞こえやすい位置に移動したり、聞こえる方の耳を相手に向けるなどして対応する。しかし、自身の力では解決できない場面もある。高井准教授は「当事者自身が片耳難聴に関する正確な知識を持った上で、周囲にどういった配慮(はいりょ)をしてほしいかを適切に伝えることも大切」と語る。

 一方で、周囲による片耳難聴者への工夫や配慮も欠かせない。高井准教授は「家庭や職場で、片耳難聴者が『ここで自分の状態を話しても大丈夫』と思ってもらえるような関係性を互いに築いてほしい」と話す。

(京都新聞社提供)

◇    ◇

 身近な疑問から行政・企業の内部告発まで、あなたの依頼を岩手日報の記者が取材します。以下のいずれかの方法で、リクエスト・情報をお寄せください。

※ いただいた情報等の取り扱いには万全の注意を払い、取材源の秘匿を厳守します。
※ 取材リクエスト・情報について、メールや電話でご連絡する場合があります。投稿をいただいても取材できない場合もありますので、あらかじめご了承ください。

盛岡市内丸3-7
報道部 特命記者係
FAX(019・623・1323)

関連リンク