東日本大震災の発生から10年。2020年度は本紙も震災報道に一層力を入れてきた。発生当時内陸の高校に通い、現地の状況は報道で知るばかりだった私にとって、いかに被災地と向き合うべきか「惑う」ことが多かったのも事実だ。

 取材では歳月を振り返ってもらう質問が増えた。だが、被災者の多くは言葉に詰まった。いろいろなことがありすぎて、簡単に表現できない。言葉には表れない感情の機微をくみ取ることは欠かせなかった。

 「本当のところを理解できているだろうか」。直後に現場に入り、残酷な光景に触れた記者とは、決定的な差があることを自覚しているだけに「荷が重い」と感じたこともあった。

 そんな中、積極的に教訓を継承しようとする生徒の姿が励みとなった。釜石高の生徒は2月、小学校で防災授業を開いた。彼らだって記憶が完全なわけではなく、年配者にヒアリングするなど試行錯誤していた。

 メンバーには、被災した生徒もいれば、被害を免れた生徒もいる。でも、温度差は感じられず「未来がある子どもたちに命を守ってほしい」との共通の思いがチームを一つにしていた。

 この春で釜石を離れる。地域の再生を目指して奮闘する住民を取材する時間はかけがえのないものだった。改めて感謝したい。

(林昂平)