東日本大震災から10年の節目を迎えた今月、県内外の小中学校では、岩手日報社が制作したNIE(教育に新聞を)用教材「3・11 忘れない」を活用し、防災や復興について学びを深めた。震災時は幼かったり、まだ生まれていなかった児童・生徒たち。記事や写真を通し、被災地の状況や日ごろからの備えの重要性を学び、命を守る教訓を心に刻んだ。

 

《盛岡・好摩小》 被災後の人生に学び

高橋和江校長の話に耳を傾け、震災を経験した子どものその後の生き方を学んだ好摩小児童

 「震災から10年。当時小学生だった被災地の子どもたちは、どんな夢に向かって進んでいるのだろう」。11日、盛岡市の好摩小(高橋和江校長、児童165人)は全校による「3・11集会」を開き、震災を経験した子どもが、その後の成長で身に付けた教訓や抱いている夢に理解を深め、つらい経験に向き合う勇気を学んだ。

 集会で高橋校長は、全校児童に対し「震災をくぐり抜け、たくましく生きている人の姿を知ってほしい」と語りかけた。震災を経験した佐々木里帆奈(りほな)さん(宮古高2年)と織笠倖亘(ゆきのぶ)さん(県立産業技術短期大学校水沢校1年)の記事を紹介した。

 震災時宮古小に勤務していた高橋校長。佐々木さんと織笠さんは、高橋校長が同校在籍時に接した児童だ。

 高橋校長は、建築関係の勉強に打ち込み、将来は宮古の役に立ちたいという織笠さんの話などに触れ、「つらいけれど震災にしっかりと向き合い、夢をかなえるために頑張っている。皆さんも大変なことがあっても、それを乗り越えていってほしい」と呼び掛けた。

 下平琉矢(とうや)君(5年)は「2人は被害を受けて、とても大変だったと思うけれど、生きる希望や夢を見つけてすごい」と受け止め、嶋瞳さん(6年)は「もし自分が災害に遭ったら、周りの人と協力し、自分のできることをしたい」と誓った。

 

《盛岡・仙北中》 歩み知り考え深める

 盛岡市の仙北中(菅井雅之校長、生徒659人)は今月上旬、全校で朝活動や総合学習の時間に教材を読み、復興について考えた。生徒たちは、被災した古里を支えようと決意した若者の姿や、大槌町の旧役場庁舎解体をめぐる住民の議論など復興への道のりを学び、自身の考えを深めた。

 1年生219人は総合学習で、「3・11 忘れない」の中から、それぞれ印象的な記事を選んでワークシートに感想を書き込み、班ごとに意見交流した。

震災復興について自分の考えをまとめ、意見交流する仙北中の生徒

 1組の工藤琥仁(こさと)さんは、震災当時中学生で消防士として古里を支えようと決意した佐藤巧真さん(大槌町)の記事に触れ、「被災して冷静でいられない中、人のために動いた佐藤さんはすごい。自分の手で古里を守りたいという思いが伝わってきた」と述べた。

 7組では、大槌町の旧役場庁舎解体についてさまざまな意見が出された。

 後日、生徒は国語の時間を使って自分自身の意見を原稿用紙に書きつづった。

 指導した長根いずみ教諭は「震災時はまだ幼く、当時の記憶があまりない生徒もいる。事実を知ることが、震災を学ぶ第一歩だ。記録を通して『どう生きるか』をそれぞれ考えてもらいたい」と語った。

 

《神戸・唐櫃中》 災害に備える力伝承

「3・11 忘れない」を用い、東日本大震災の教訓を学ぶ神戸・唐櫃中生徒(唐櫃中提供)

 東日本大震災の教訓を学び、南海トラフ巨大地震に備える―。全校で防災学習に取り組んでいる神戸市北区の唐櫃(からと)中(樽本信浩校長、生徒189人)は、「3・11 忘れない」を使った学習や岩手日報社社員によるオンライン講演会を行い、災害から命を守るための教訓を胸に刻んだ。

 新聞学習は今月初旬、全クラスの社会科の授業で実施。記事を読み、避難行動や被災地の復興の状況、後世に伝えていくための方法など、生徒それぞれが自分の考えをまとめて意見交流した。

 青木泉さん(2年)は授業を振り返り「災害時、まずは自分の命を自分で守ることが大切だと思った。身近なところで災害が起きた時、中学生の自分ができることを考えていきたい」と学びを深めた。

 授業を実施した佐々木隆光教諭は「調べ学習用の教材として、『3・11 忘れない』を有効に活用できた。実際に災害が起きた時に自分たちは何をすればいいか、多くの生徒が関心を持っていた」と手応えを語った。

 同校では、災害に備える力を養うため、阪神大震災や東日本大震災の教訓を継続して学んでいる。

 樽本校長は「神戸でも、小中学生に阪神大震災の記憶や教訓を伝承していくことが課題だ。次世代につなげるためには教育の力、防災教育は重要だ」と説明。生徒に対し、「災害が起きても命を守れる知識や技能とともに、見通す力や行動力、コミュニケーション力を身に付けてもらいたい。それは、防災だけでなく人生をより良く生きる力につながる」と、防災学習を通した人間力育成に期待を寄せる。