遠野市 小学校講師 中村俊介さん(28)

 遠野市遠野町の小学校講師、中村俊介さん(28)は東日本大震災発生時、不来方高の3年生だった。生まれ育った宮古市鍬ケ崎の実家は津波で全壊。あすの生活がどうなるか、尽きない不安を抱えたあの時から10年。教員採用試験に合格し今春、教諭となる夢がかなう。間もなく新たな家族も生まれる。「多くの支援のおかげで、ここまで来られた」と感謝する。

 あの日、中村さんは岩手大教育学部への進学を控え、実家に帰省中だった。海沿いをジョギングし、帰宅すると地震が発生。母、祖母と急いで高台に逃げたが「もし走っている最中だったら、自分はきっと逃げられなかっただろう」と振り返る。数日後、父と見に行った自宅は1階がつぶれ、倒れた火の見やぐらが引っかかっていた。

 家族で身を寄せ合い、高台の親戚宅や避難所で過ごした。弟はまだ小学生、自分は進学せずに働くべきだろうか。こんな状況で、このまま盛岡に行っていいのだろうか。後ろ髪を引かれる思いで、5月の入学式に臨んだ。

 宮古市には頻繁に帰省した。帰るたび、姿を変えるまちの姿が新鮮だった。家族は2014年、高台に自宅を再建。中村さんは16年に大学を卒業した。その後毎年、教員採用試験を受けながら、講師として県内の小中学校で勤務してきた。

 本年度、努力が実を結び同試験に合格。春から県内の中学校で体育教諭として働く。19年に結婚した妻との間に今月、第1子の男の子が誕生する予定だ。「震災があっても大学に通わせてくれた両親、支えてくれた周囲に感謝でいっぱい」とほほ笑む。

 将来受け持つ子どもたちは、震災を知らない世代。「この場所で、こんなことがあったと知り『自分ごと』として考えてほしい。多くの支援があって、みんなが育ち、ここにいるんだと伝えたい」。未来を生きる生徒にも、我が子にも、経験を伝え続けると誓う。