東日本大震災の発生から10年が経過した。今年の3月11日午後2時46分は、大船渡市三陸町綾里(りょうり)の田浜地域で震災伝承碑の取材中に迎えた。碑を建立した地域の思いとご遺族の言葉を聞き、改めて身が引き締まった。

 先日、当支局の後輩が学校での取材を終え、沈んだ顔をしていた。どうしたのか聞くと、震災からの思い出を尋ねた時、複雑な思いが巡ったのだろうか、生徒は泣きだしたという。生徒は懸命に言葉を紡ぎ取材を終えたが、後輩は「申し訳ないことをしてしまった」と肩を落としていた。

 わが身を振り返り、10年前の3月11日を思い出した。当時は田野畑村で取材中。高台の避難所に移った夜、ある高齢女性に話を聞くと「夫が流された…」と一言だけ。記者として失格だが、続く言葉が見つからず取材にならなかった。

 記者の心構え一つだと分かっているが、いまだに未曽有の災害に直面した人から経験をじっくり聞かせていただくことは「当たり前」とは思っていない。

 今月で大船渡を離れる。支局で勤務したこの4年は、住宅や商店は仮設から本設への移行が進み、まちの変化が見える特別な時間だったと感じる。その都度、あの日の出来事を、その後の歩みを教えていただき感謝しかない。

 (長内亮介)