2021.02.04

⑪被災地を歩く 山田町中心部

【2011年3月12日】 津波直後から大火に見舞われた山田町中心部。夜明け近くになっても延焼を続けた
【2011年12月1日】 がれきが撤去された中心部。広大なさら地にプレハブが点在していた
【2014年6月16日】 仮設商店街が営業する中、新たなまちづくりに向けて陸中山田駅周辺の土木工事が本格化した
【2015年10月23日】 土地区画整理事業のため大規模に盛り土された中心部。仮設商店街も移転した
【2021年1月29日】 本設店舗や住宅が再建された。空き地は点在するが利便性の高いコンパクトなまちが形となった
【写真=2011年3月12日、11年12月1日、14年6月16日、15年10月23日、21年1月29日】

新たなまちに若者の力

 プロパンガスの爆発音と電線から飛び散る火花。2011年3月12日未明、津波の後に発生した火災は山田町役場に迫っていた。三陸沿岸で幾多の被災者が厳しい寒さに耐えていた時を同じくして、じりじりと熱が顔に焼き付く。現実の光景とは思えなかった。

 あれから10年。町中心部は約3メートルかさ上げされた土地に商業施設や住宅が少しずつ増え、穏やかな日常が戻っている。住宅地の後楽町を歩くと、津波の教訓を伝えてきた住民団体山田伝津館のプレハブが、駐車場になっていた。

 「生きていれば、今もあの日のことを語り続けていたと思います」。代表の故田村剛一さんの長男直司さん(54)は語る。町議や自主防災会長をしながら、手弁当で東日本大震災被災当初の手記や写真集を発刊した。

 「命を大切にする精神がなければならない」と、防災教育の大切さや災害公営住宅の入居者の孤立を憂い、提言を続ける信念の人だった。17年7月に膵臓(すいぞう)がんのため78歳で亡くなった。津波を生き延びた人たちも生を終えていく。時の経過を思った。

 山田地区は6割超の1593棟が被災。更地となった場所に仮設店舗が立ち、その営みが再生への活力を生み出してきた。三陸鉄道リアス線陸中山田駅を中心としたコンパクトなまちが形になった今、新たなプレーヤーが動き始めている。

松本龍太さん(右)と共に移転用地周辺に立つ阿部佳津久さん。新たな担い手としてまちの活性化を思い描く=山田町川向町

 「ここに立つと、実感が湧いてきますね」。国道45号沿いの川向町の空き地に立った阿部佳津久(かつひさ)さん(38)は、表情を引き締める。津波で釜石市内の自動車販売店が被災。11年末に地元の山田町船越で自動車販売整備業を立ち上げ、常連客を増やしてきた。

 町中心部で行われた土地区画整理事業は、未利用地の活用が課題だ。特にも国道45号周辺は9・9ヘクタールが整備されたが、利用は約4割にとどまり、ガソリンスタンドや飲食店が点在する程度。阿部さんは「まちなかに車屋がないので。寂しいじゃないですか」と3年前から計画を温め、今夏の移転を目指す。

 支えとなったのは、町商工会青年部の仲間たち。部長の松本龍太さん(42)は事務用品販売業の2代目として震災後に帰郷した。同駅付近に本設再建した店舗で仕事に励む。

 阿部さんの挑戦と呼応するように、3月には同青年部として町に国道45号周辺の未利用地の活性化策を提言する。「これまで青年部の活動はイベント中心だったが、さらにまちのことを考えていきたい。おやじたちの世代から思いを受け継ぎたい」と構想を練る。

 取材を通して「よそ者」を寛容に受け入れるおおらかさを感じてきた。花巻市出身で、13年4月にデザイン事務所を町中心部に設立した佐藤健さん(43)も意見を同じくする。

 内陸との温度差に違和感を持ち、新たな活躍の場として定めた。水産物のオンライン販売事業にも携わり、1次産業に可能性を見いだす。「痛快な漁師さんたちに教えられることは多い。これからも伴走していきたい」。私にとっても同郷の同級生。山田の人としてなじんだ姿がまぶしい。

 このまちには、たくましさがある。懸命に前を向き、次世代に思いをつなぐ力だ。被災を乗り越え、新たなまちの姿が形になった今、可能性をさらに広げていく姿を追い続けたい。

 (報道部・八重樫和孝)

【2011年3月12日】 津波直後から大火に見舞われた山田町中心部。夜明け近くになっても延焼を続けた
【2021年1月29日】 本設店舗や住宅が再建された。空き地は点在するが利便性の高いコンパクトなまちが形となった
【写真=2011年3月12日、21年1月29日】
 

 山田町中心部の復興状況 三陸鉄道陸中山田駅を中心に共同店舗棟や金融機関、交流拠点が整備された。境田町、川向町、中央町、八幡町の人口は被災前(2011年2月末時点)の884世帯2078人に対し、380世帯703人(20年12月末時点)と人口流出が大きい。町商工会によると被災337会員のうち、継続・再開183、未再開4、廃業・脱会147、転出3となっている。地区内は道路整備が進み利便性が高まったが、20年12月末時点の山田地区の土地利用状況は、473区画のうち263区画。