大船渡市赤崎町 市職員 志田成美さん(26)

 大船渡市赤崎町の市職員志田成美さん(26)は、東日本大震災で祖母スミさん=当時(77)=を亡くした。けんかをしたまま最後になり悔やんでいたが、きちんと向き合い、経験を伝えようと決心。Uターンし、家族4人で古里に暮らしている。

 2019年11月に市職員となり、市民環境課で住民票発行や戸籍の届け出などの受け付け業務を担当。「地元でも知らないことが多くて日々勉強になる」と充実感をにじませる。

 当時は大船渡高の1年生。朝の身支度中にスミさんが言った「いい大学に行きなさい」という一言にいら立った。口論になり「もう一生話さない」と言われ、無言で家を出た。

 弓道部の活動中に地震が起き、自宅は2階まで浸水。中にいたスミさんが亡くなった。「頭が真っ白で、何も考えられなかった。『ごめん』という思いだけ」と振り返る。

 スミさんは礼儀作法に厳しく、泣いて帰ってくると「負けんな」と叱られた。けんかばかりだったが、必ず「行ってきます」は言っていた。「なぜあの時言えなかったのか。進学を応援してくれて、素直にありがとうと言えばよかった」

 後悔で震災に触れる機会が多い県内にいるのが嫌になった。仙台市へ進学し、同市内の銀行に就職。震災のことを聞かれても祖母のことは話さなかった。

 だが、復興する古里を見るうちに「私も地元に向き合わないと」と気持ちが変わった。年を取っていく祖父を見て「祖母のときのように後悔したくない。家族と過ごしたい」という思いもあり、Uターンした。

 「亡くした悲しみにとらわれ、自分だけ時が止まっている気がした」。仕事の中で震災を明るく語る市民と触れ合い、自分も話してみようと思った。「多くの支援に感謝しながら、前に進みたい」。地元とともに、未来へ歩む。