忘れることない岩手 震災10年ともに
川崎市 会社員 むすび丸さん(28)
大学の合格発表の翌日。揺れ、押し寄せ、崩れ、流された思い出の地。
夢いっぱいだったはずの旅立ちは、18年間生まれ育ってきた岩手を置き去りにするという後ろめたさに変わった。何の恩返しもできないまま、あれからもう10年がたつ。
何もなかったように東京で働きながら、それでも決して忘れることはない。
田舎から早く抜け出したいと思っていたはずなのに、震災の日からずっと、私の時は止まっていて、私の心は岩手にある。
ことあるごとに、故郷の澄んだ空気、爽やかな風、はるかな岩手山を思い出し、同時に、恐ろしい地響きと灰色の空、たくさんの涙がよみがえる。
きっとずっと消えることはないのだろう。この痛みは、私が故郷をいとしく思っている証しだから。
あの日の心の震えを胸に抱いて、これからも生きていく。