青森県鰺ケ沢町 建築大工 吉田 孝次さん(73)

 東日本大震災で両親を亡くし、進学を諦めなければならない。「どうせ自分なんか」と苦しみ、悩み、絶望している人に聞いてほしいことがあります。

 私の一番古い記憶は、両親がおらず、親類の家で育てられていた風景です。母親と手をつなぎ、笑顔でおしゃべりしながら散歩している子どもを見たとき、家族で大声で笑いながら遊んでいる姿を見たとき、うらやましく大空に向かって泣きながら叫びました。

 「僕は何も悪いことをしていないのに、どうしてお父さん、お母さんがいないの。神様助けて」。実は両親はいたのですが、父は北海道に出稼ぎ、母は病気で離れたまちの病院に長期入院していたのです。

 そのころの私の夢は、明るく温かい大家族でした。その夢を追い、時は流れ、今は新築の大きな家に4世帯8人家族で毎日明るく幸せに暮らしています。田舎の名も無い大工でも、その道一筋に頑張っていると、トップの仕事にたどり着くことも夢ではないんです。

 親という漢字を思い出してください。親は子どもがどんなに遠く離れていても、子どもを見守っていてくれるんです。いつも大丈夫、と背中を押しているんです。心にはいつも親がいて、一人ではないんです。

 笑顔を取り戻してください。自分をもっと好きになってください。津軽の冬は、どんなに寒さの厳しい年でも、4月には弘前公園の日本一の桜が必ず満開になります。今が苦しいからと決して絶望しないでください。春は必ず訪れます。