昨年末、東日本大震災を経て一つの橋が待望の復旧を果たした。陸前高田市気仙町今泉地区から高田町につながる姉歯橋。開通に合わせて渡り初めをした高齢男性の姿が印象深い。

 セレモニーはなかったが、橋近くに住む男性はゆっくり歩き始めた。「大変いい」。気仙川や周辺を眺め、在りし日の光景をかみしめるように1往復した。男性にとって震災後の年月は、どんな時間だったのだろうか。

 震災から3月で10年となる。大切な命、かけがえのない古里、ありふれた日常…。多くを失う中で、その後に得た財産も少なくない。取材相手には「震災で学んだことは何ですか」と尋ねる機会がある。

 発生時は入社4年目だった。震災前と比べて震災後の時間がはるかに長くなっている。この間、自分は成長できたのか。自信はない。確かなのは取材や日常生活を通じて多くの出会いがあり、支えられ、前に進めてきたことだ。

 悲しみ、悔しさ、やるせなさ。沿岸部の人たちはそれぞれの思いを胸に、震災後の日々を送ってきた。歩みのスピードは人によって異なる。震災10年は節目であっても、ゴールではない。これからも震災から学び、寄り添い続けなければいけない。

(向川原成美)