閉塞(へいそく)感。今年の取材現場で一番多く聞かれた言葉であり、多くの遠野市民が抱いていた感情だと思う。

 長期化する新型コロナウイルスの影響で商いの先行きが見えず、遠野まつりも2年連続の中止。閉塞感打破の訴えが強調された10月の市長選で、投票率が前回比3・52ポイント伸びた背景の一つには、市民の強い危機意識があったのだろう。

 大局的には厳しい社会情勢が続くが、若い人材の活躍という光は着実に差し込んでいる。そう感じさせる出来事があった。

 先日、市内の交差点でお年寄りに付き添う一人の若者の姿を見た。お年寄りに後で話を聞くと、目が悪く道路を渡れずにいたところ、偶然若者が声を掛けてくれたとのこと。その若者は「共生社会の勉強をした」と話したという。

 2019年夏の東京五輪・パラリンピックの共生社会ホストタウン登録を機に、同市では学校を中心に多様性尊重の実践型授業が強化された。当初は子どもたちの理解が追い付かない様子も目にしたが、着実にその理念が浸透しつつあるのだと、うれしくなった。

 当たり前のようでいて、行動に移すとなると実は勇気が要ることは、日常の中で意外と多い。閉塞感を打ち破る小さな勇気を丁寧に拾い上げる取材を、来年は心掛けていきたい。

(小野寺隼矢)