本県が建設候補地とされる素粒子物理学の実験施設、国際リニアコライダー(ILC)で、県内企業が建設参入に備える動きが広がっている。いわて産業振興センター(盛岡市)が運営する研究会で技術を学ぶ参加数は初期の4倍、168社に拡大し、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同で部品試作を進める例も。本県の高いものづくり技術を生かし、国際プロジェクトを支える環境が着々と整っている。

 茨城県つくば市にあるKEK構内の研究施設を今月中旬、同センターの黒木賢一・加速器コーディネーターらが訪れた。来年1月末に行う県内企業向けの現地実習について研究者と打ち合わせを行った。

 2015年に発足し、同センターが運営する「いわて加速器関連産業研究会」がILC参入に備えて開いた技術セミナーは33回。会員の県内企業は初期の45社から168社に増えた。加速器コーディネーター2人が、県内企業をKEKの研究者らにつなぎ、建設に必要な技術に磨きをかけている。

 ILCでは、電子と陽電子を加速させる超伝導加速空洞が極めて重要となる。その空洞を格納する円筒状容器「クライオモジュール」(1台長さ12メートル、重さ12トン)を接続し、全長20キロの直線型加速器を造る。極微の粒子を的確に衝突させるには、空洞そのものの高い性能のほか、わずかな震動の影響も受けない環境が求められる。

 北上市和賀町の岩手製鉄(佐藤満義社長)は一関高専と共同で、容器と架台をつなぐ装置「アクティブムーバー」の開発を手掛けている。これは容器の位置を遠隔操作し、0・01ミリメートル単位の調整が可能。ILCの実機を想定した装置を既に組み上げ、今後試験を開始する。実用化されれば、稼働コスト低減や実験の精度向上が図られる。

 同社の及川光紀取締役は「ILCで実績を積めれば、世界の加速器関連施設や他分野との取引拡大も見込める。県内ものづくり企業の新たな連携が生まれる機会にもなる」と期待を高める。

 このほか、超伝導加速空洞の性能を上げるための内側の研磨装置や陽電子発生装置の冷却システムの開発などに、精密部品製造や機械加工をはじめ多数の企業が取り組んでいる。

 世界最先端となるILCへのステップとして、仙台市の東北大で建設中の次世代放射光施設への参入も相次ぐ。同センターによると、電子の軌道を曲げる電磁石の架台や電源を収める筐体(きょうたい)、装置の配備業務など少なくとも県内5社が受注し、取引金額は約5億2千万円に上る。

 黒木コーディネーターは「加速器や放射光関連で海外からの引き合いのある県内企業もある。半導体分野で求められる技術を蓄積することにもなり、取引拡大を支援していく」と力を込める。