夏に取材で訪れた釜石市の片岸公園で、思いがけず笛の音を聞いた。郷土芸能の虎舞の笛。防潮堤の方向からだったが、奏者を見つけることはできなかった。とても優しい音色だった。

 祭りのおはやしや威勢のいい掛け声、合唱、熱戦を繰り広げる選手を応援する声―。新型コロナウイルス禍で日常を彩る「音」を聞く機会が減った。だからこそ、心に響く音、歌声との出合いが印象深い。

 釜石艦砲射撃の惨禍を描いた女声合唱組曲「翳(かげ)った太陽」。歌を絶やすまいと7月にCD録音が行われた。メンバーに歌を通じ戦争の事実を知る小中学生も。悲しみや怒り、平和への願いを込めた力強い歌声に、継承の決意を感じた。

 10月には釜石市民を中心に作り上げたミュージカルが上演された。

 オーケストラの生演奏に合わせ、出演者が歌と演技を披露。子どもたちの堂々たる姿に拍手が湧き、コミカルな場面では笑いが起きる。

 「音楽の力でまちを元気にし、喜びを共有したい」。脚本・音楽を担った山崎真行さん(71)の言葉通り、会場は明るい空気に包まれた。

 間もなく新年を迎える。大槌町では元日に複数の団体が虎舞を奉納。東日本大震災の復興完遂へ、歩みを進めるまちにおはやしが響く。さまざまな「音」が復活し、穏やかな年になることを願う。

(川端章子)