「ワクチン」。今年誰もが口にした言葉だろう。「予約」「接種」-。世代を超え、これほど同じ期間に同じ経験をしたことがあっただろうか。

 一関市については「県内で先行して」と書き出す原稿が多かった。計画、納入、接種。11月末には2回の接種率が人口10万人以上の市と特別区で全国1位に。「ワクチンといえば一関」とも言われるが、それは前例のない中でモデルを構築することでもあった。

 一関支社のビルには地元の医師会と歯科医師会の事務所があり、頻繁に打ち合わせをしていた。刻々と変わる国の方針。「ワクチンが『来れば』の計画です」。担当大臣発言を常にチェックするという市の担当者は必ず言葉を加えた。

 思い出す光景がある。高齢者宅に訪問接種する医師に同行した。山間部の夫婦のほっとした表情。経過観察の15分ほどを目を閉じていすにもたれた夜勤明けの医師は、「お大事に」とほほ笑んで次の施設に軽自動車で向かった。

 接種率は競うものではないし、自治体で差が出るのも本来どうかとは思う。ただ、進行形の脅威にスピードが重要だったのも事実だ。3回目接種が話題になるたび、腕の腫れと発熱を思い出す。関係者の使命感と奮闘を忘れないための「副反応」だと思っている。

(佐藤成人)