言葉の重みを痛感した記者1年目だった。取材相手の思いをくみ、その人を含めて多くの人が笑顔になるような記事を書きたいと思ってはいるが、試行錯誤の日々だ。

 異なる人間である限り、文章の受け取り方が違う場合がある。そう頭では分かっていても、自分に対する腹立ちと、相手への申し訳なさを感じたことがあった。

 ある記事の掲載後に取材相手から「残念です」とメールが届いた。丁寧に書いたはずだったが、互いに文章から受ける印象が異なっていたことにショックを受けた。

 人生の一瞬に立ち会い、短い文章で表すことの重大さに改めて気付いた。

 「ありがとう」に支えられたことも多い。私自身初めて「ひと」のコーナーを書かせてもらった墨飯染(ぼくはんぞめ)作家の佐藤貴和子さん(94)は取材の際に「人とのつながりを大切に」と教えてくれた。作品に込めた佐藤さんの温かな思いが伝わるよう、柔らかな表情を思い浮かべ記事を書いた。

 掲載から数日後、封筒が届いた。「あなたの人柄が表れた優しい文章だった、ありがとう」と記された佐藤さんからの手紙。涙をこらえられなかった。

 人を傷つけるより、守ることができるペンを握る。そう誓い、精進したい。

(佐々木杏里)