東日本大震災後に本県沿岸各地で作られた震災前のまちのジオラマ復元模型。その保存・活用に地域差が生まれている。伝承活動の素材として使う自治体がある一方、どこに保管したかさえ判然としないケースもある。11日で震災から10年9カ月。膨大な数に上るこれら災害関連資料をいかに管理し、古里の記憶と教訓をつなぐかが問われている。

 ジオラマの製作は、神戸大大学院の槻橋修准教授の研究室などが主導。2012年から今年にかけて、県内では陸前高田、大船渡、釜石、宮古、大槌、山田、岩泉、田野畑、野田の9市町村19地域で作られた。震災前のまちを500分の1サイズの発泡スチロール製模型に再現。住民がプラスチック製の「旗」に思い出を書き込んで立て、記憶の継承やコミュニティー再構築の手掛かりにした。

 各自治体などによると、現在は多くを各地の住民組織が管理するが、4地域では廃棄の可能性も含めて所在が分からない。大切に保管していても活用に悩む地域もある。

 釜石市鵜住居(うのすまい)地区がその一つ。同地区復興まちづくり協議会(佐々木憲一郎会長)が所有するジオラマの大きさは計24平方メートル(1個1平方メートルのブロック24個で構成)。大きいために保管場所が限られ、現在は地元の鵜住居小の一室に置き、普段、住民は目にすることがない。

 活用を探ろうと11月下旬に同校で開いた見学会で、住民たちは「この花屋は前は魚屋だったな」、「ここさ拝みに行ぐとヘビが出んだ。うじゃうじゃって」と和やかに語り合った。ただ今後は経年劣化が進むとみられ、佐々木会長(53)は「かびが生えるなど衛生面で問題が出れば、処分せざるを得ない」と悩ましい現状を口にする。

 大槌町では同町末広町のおしゃっちで常設展示。施設を運営する一般社団法人おらが大槌夢広場(神谷未生(みお)代表理事)の語り部ガイドも活用する。例えば、防潮堤があるため分かりにくい海と生活域の近さ、災害危険区域の位置などを模型で示した後、実際に町を案内する。語り部を務める岩間敬子理事(58)は「模型があると、伝わり方が全然違う」と実感する。

 被災地には事実や教訓を記した文書、支援・交流の証しとなる写真など膨大な資料が残る。保存・活用は担い手や資金、保管場所が不可欠。県内では3Dデータとして残す動きもある。

 槻橋准教授は「模型は住民の絆の集合体。思い出を語り、記憶を集めた他に代え難い物だ。うまく子どもたちに見てもらえるかたちで残るといい」と願う。