東日本大震災から10年8カ月が経過した11月下旬、身元不明遺体が行方不明となっていた山田町八幡町の竹内直治さん=当時(78)=と判明した。

 涙を流して遺骨を手元に迎えた妻マサさん(84)は、優しかった夫の思い出を話してくれた。病弱ながら家族のために懸命に働いてくれたこと、自宅庭を花でいっぱいにしてくれたこと。一緒に避難しようとした瞬間に津波に襲われ、つないでいた手を離してしまった後悔-。

 「何度もあの瞬間を思い出して苦しんだ。夫が帰ってくることだけを願い続けた長い日々だった」と震災後を振り返り、県警や関係者への感謝を繰り返した。

 県によると、県内の震災行方不明者は1111人(10月31日時点)で、現在も身元が分からない遺体は47人。ハードの復旧事業がほぼ完了した状況の今でも、家族の帰宅を待ち続ける人たちがいることを忘れてはいけない。一人一人の復興はまだ途上だ。

 震災や新型コロナウイルス感染症など有事のたびに私たちは「ありふれた日常のありがたさ」を再認識する。明日が来ることは決して当たり前ではない。地域に暮らし、住民に近い立場で取材ができる支局記者として、かけがえのない日々の一こまを今後も丁寧に追い掛けていきたい。

 (刈谷洋文)