【仙台支社】国際リニアコライダー(ILC)の誘致を目指す東北ILC推進協議会(共同代表・大野英男東北大総長、高橋宏明東北経済連合会名誉会長)は25日、仙台市内のホテルで講演会を開いた。東京大素粒子物理国際研究センターの浅井祥仁(しょうじ)センター長(54)はILC開発が加速器技術を進展させ「イノベーション(技術革新)が生まれる」と説いた。

 オンラインを併用し、約160人が聴講した。欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)の国際チームの日本グループ代表としてヒッグス粒子の発見に貢献した浅井氏は、その性質を精密に調べるために「ILCが必要だ」と強調した。

 CERNの大型円形加速器(周長27キロ)は極微の粒子を回して衝突させるのに対し、直線形のILC(初期整備延長約20キロ)は両端から粒子を飛ばして中央で衝突させる。ILCの方が高度な加速器技術が必要だとし「放射光施設やがん治療に活用できる。新しい半導体をつくるための光源や量子コンピューターにも使えないかなど議論されている」と応用範囲の幅広さとイノベーションの大きな可能性を解説した。

 国際協力で進めるフランスの国際熱核融合実験炉(ITER)が「東西冷戦のデタント(緊張緩和)の恩恵を人類にもたらすモニュメントとして取り組まれた」と言及し、ILCについて「さまざまな分断、対立がある今こそ必要だ」と指摘。実現に向けては「国際協議は文部科学省が中心だが、経済協力開発機構(OECD)や国連のようなハイレベルな話し合いも必要だ」と指摘した。

 ILCは宇宙創成の謎に迫る素粒子物理学の巨大な実験研究施設。岩手、宮城両県にまたがる北上山地(北上高地)が建設候補地とされる。欧米の科学コミュニティーは日本での実現に支持を表明しており、日本政府が誘致の可否を検討している。