2021.11.25

暮らしの支えに感謝

近所のスーパーでヘルパーの七戸優子さんと一緒に食料品を買う小野寺美保子さん(左)。直接の買い物は週1回になった=盛岡市内
近所のスーパーでヘルパーの七戸優子さんと一緒に食料品を買う小野寺美保子さん(左)。直接の買い物は週1回になった=盛岡市内

脊髄小脳変性症

小野寺 美保子おのでら・みほこさん(56)=盛岡市

 

③福祉サービスの利用

 小野寺美保子さんは車椅子を使うようになって20年以上がたつ。20代の半ばから歩行が不自由になり、歩いている途中で足が疲れ、道の真ん中で座り込むこともあった。初めて車椅子に乗ったとき、こう感じたという。

 「こんなに楽な乗り物があるんだ」

 歩いてだと行けなかった遠くにも、車椅子を使えば行くことができた。車椅子生活になっても悲観はしなかった。

 6年前に引っ越した盛岡市内の公営住宅。バリアフリー仕様で玄関前にスロープがあり、室内は居間と浴室を除けば車椅子のまま移動できる。

 「前にいた民間のアパートは『マッチ箱』のように狭かった。ここは広いし、段差が少ない。玄関を開ければ、かわいい犬が散歩していたり、夜は星空も見える。家賃も下がりました。万々歳です」

 手にする身体障害者手帳は最重度の1級。車椅子の1人暮らしで、近所に親しい人はいない。

 生活に欠かせない福祉サービスの利用が、社会とつながる〝窓〟の役目を果たしている。10月上旬の晴れの日、小野寺さんは前のアパートの頃から世話になる訪問介護(ヘルパー)の七戸優子さん=ニチイケアセンター盛岡南=に車椅子を押してもらい、近所のスーパーに出掛けた。

 店内ではかごを膝の上に乗せ、両手でがっちりと固定。「こっちにするかな」。甘い物が好きで、この日は野菜などのほかに菓子パン3個を購入した。

 指が曲がり手先は不自由でも、支払いは自分でする。「レジでもたもたすると、ヘルパーさんがやきもきしているのが分かる。でも自分はマイペースだから気にしません」。小野寺さんは今では週1回になった自分での買い物を楽しむ。

 ヘルパーは週5回利用し買い物や炊事、洗濯、掃除、入浴など生活の多くを頼る。そのほか週2回は器具などを使うリハビリに通い、今年10月には24時間見守りサービスを手掛ける福祉事業所の訪問看護と訪問リハビリの利用を始めた。

 先日は新しく水着を買い、プールでダイエットを兼ねた歩行訓練にも初挑戦。誰とも会わない日は1日もない。

 電話をしたり、自宅に時々遊びにくる女性の友人がいる。以前はタクシーを使い、1人でも車椅子で外出していた。お気に入りは同市の肴町かいわい。ショッピングビルの100円ショップで手芸用品などを見て時間を過ごすのが好きだった。

 ただ膝の調子が悪化した昨年暮れごろからは、1人で出掛けるのをやめにした。新型コロナウイルスの問題が起きて以降、ニュースポーツの大会や料理教室など各種の交流イベントも軒並みなくなった。

 「中止ばかりで面白くない。おしゃべりが好きだし、あれば行くのに」と顔を曇らせる小野寺さん。「外出したり、ヘルパーやリハビリを利用するのは、ぼけ防止のためでもあります」と続けた。

 2年ほど前に自宅で下血し、市内の病院に約1週間入院。若い頃に検査入院して以来だった。「ケアマネジャーさんに手続きを手伝ってもらい、ヘルパーさんにも必要な物をそろえてもらった。1人では生きられない、手伝ってくれる人がいるから動けているんだと実感しました」

 難病でも車椅子でも1人で暮らし続けることができるのは、多くの人が支えてくれるから。現実を受け止めて、小野寺さんは感謝する。

 

 公営住宅のバリアフリー状況 盛岡市の市営住宅(23団地、2481戸)のうち、小野寺美保子さんのような身体障害者(車椅子常用者)用の住戸は2021年4月現在で9団地の32戸(整備率1.3%)。仕様は室内の段差解消、トイレ・浴室・玄関への手すりの設置、大きめ浴室など。現在の整備基準は02年度から適用され、それ以前に整備された住戸は浴室、和室と床との間に段差がある。身障者用を含む高齢者仕様の住戸は19団地の1351戸(同54.5%)。県営住宅(5100戸、災害公営除く)の高齢化対策住戸は21年3月現在2877戸(同56.4%)。

 

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