2021.10.23

花巻「にせ鶏頭」は不謹慎? かつての山頂、俗称定着

地蔵の石仏が祭られた「にせ鶏頭」。奥に現在の山頂を望む
地蔵の石仏が祭られた「にせ鶏頭」。奥に現在の山頂を望む

 早池峰山の西、花巻市にある鶏頭山(1445メートル)は古くから信仰の場として敬われる。山頂に近い岩場には石仏があるが、なぜかその場は「にせ鶏頭」というありがたくない名で呼ばれる。「お地蔵様を祭る所なのに」。山を愛する地域住民から特命取材班に訴えが届いた。取材を進めると、その場所は昔、山頂とみなされたらしく、現在の頂と混同を避けるため「にせ頂」の意味合いで流布した可能性もあると分かった。お地蔵様も住民も首をかしげるこの呼び名、あなたはどう思いますか?

 「にせ鶏頭」は山頂から30分ほど離れた所にある。巨石が転がり、麓から見ると確かに、とさか状に見える。祭られた地蔵には元治2(1865)年の銘があり、少なくとも江戸末期には信仰対象となっていたようだ。明治9(1876)年編集の県管轄地誌には「巓頂(てんちょう)(山頂)ニ亂石(らんせき)(岩)ヲ載(いただ)ク、遙ニ之ヲ望メハ鶏頭の如シ」とあるように、ここは、かつて山頂とされていたらしい。

 しかしその後、国土地理院が三角点を現在の山頂に置いた。同地理院によると、明治11年10月の観測記録があり、これを踏まえ現山頂を定めたとみられる。

 ではなぜ「にせ鶏頭」の呼称が定着したのだろう。市総合文化財センターの中村良幸(よしゆき)文化財専門官は「1950~70年代に、登頂を目的とする近代登山が定着した。頂上だと勘違いするからと、登山客が俗称として呼び始めたのではないか」と推測する。これが広がり、市販の山岳地図やガイドに記載されたこともあって定着した可能性がある。

 既に一般化した呼称かもしれないが、先人に倣い今も参拝目的で入山する住民にとって、「にせ」呼ばわりされ続けるのは心穏やかでない。

 中村専門官は「多くの人に山の歴史を伝えるなど、まずは信仰の山への畏敬の念を持ってもらうことが必要では」と助言する。

 

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