祭りの屋台を訪れた住民が、夕空に響くYOASOBIや宇多田ヒカルの歌に思わず足を止める。広場には曲に乗せ、それぞれのダンススタイルをぶつけ合う若者たち-。そんなダンサーと住民が一体で盛り上がる光景は幻に終わった。

 新型コロナウイルス禍で中止となった9月のみやこ秋まつりでは、旧宮古市役所跡地に完成したうみどり公園を活用した試みが数多く予定されていた。

 まつりと同時開催されるはずだったダンスバトルイベント「Eastern Groove(イースタングルーブ)」もその一つ。

 洋楽中心に選曲し、即興のダンスで争う通常の部門とは別に、Jポップで踊る部門を企画したが、まつりと共に中止となった。

 学生時代に参加したダンスイベントは会場を貸し切り、関係者のみで観戦するものが多かった。主催した佐々木秀崇(ひでたか)さん(26)の「ダンスを知らない人にも理解してもらえる、東北でも珍しい機会だった」との言葉をかみしめ、共に悔しさに浸っている。

 発表の場がなくとも心は躍り続けるのがダンサーだ。今も音楽が聞こえれば思わずリズムを刻んでしまう。ストリート文化が米国東海岸から世界を席巻したように、きっと三陸沿岸からダンス文化が盛り上がる日が来ると信じている。

(佐藤渉)