2年半の支局生活を振り返ると時の早さに驚く。久慈地域の魅力を五感で堪能した幸せな日々だった。

 支局に来て最初に驚いたのは久慈市の時報だ。朝昼夕3度、全てNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の挿入歌。特に夕方の「潮騒のメモリー」は切ない音色が暮れゆくまちに似合い、とても好きだった。

 海の恵みもたくさん頂いた。初めて食べたアワビやナマコ、マンボウの腸…。苦手なホヤも大好物になった。自宅でイワシをさばくのにも挑戦し、料理など全くしなかったのに、おいしい物を前にすれば人は変わるのだと思った。

 船にも乗せてもらったが、毎回カメラのファインダーをのぞくと一瞬で酔う。やむを得ず撮影を諦め、潮風に身を委ねるひとときは最高だ。広い海原は見ているだけで癒やされた。それでも9年半前、この穏やかな波が牙をむいたこと、今も海に近づけない方々がいることを常に忘れてはならないと思った。

 10月の本社異動が決まった。耳はすっかりあまちゃん時報に慣れ、海の味覚も知ってしまったし、潮の匂いや青さのない景色は寂しい。何より地元の方々と離れがたく「あまロス」ならぬ「くじロス」は深刻だ。だが、メソメソせず前を向き頑張りたい。久慈地域の皆さんとの温かな触れ合いを胸に。

(向山俊恵)