リレーエッセイ イワテライフの楽しみ方

伊吹有喜さん第3回(全4回)

 
「青たんきり」(写真奥の右=関口屋菓子舗)と「きりせんしょ」

 盛岡取材をかねて散歩中に、「タンキリ」という謎めいたお菓子の名前を聞きました。「たんきり飴」のようなのど飴を想像しながらお店に行きますと、餅米が材料の、ねじりの入った細長い棒状のお菓子でした。短冊に切られているから「たんきり」だとか。折しも七夕の時期だったので、たいそう風雅な名前に感じられました。

 私が好きなのは青豆きなこが入った「青たんきり」。きなこの素朴なぽくぽくした味わいが、ほうじ茶によく合います。

 再び盛岡に来た時、今度は「キリセンショ」という名前のお菓子を知りました。ベージュか茶色の小さな餅菓子で、上にクルミなどが飾られているのですが、お店によって色や飾りが微妙に違うのです。さらに謎めいていたのはその食感。初めて食べた時、お餅からとろりと流れ出た蜜に驚き、二回目は、ひんやりとした蜜の甘美さにうっとり。お餅の内部に液体状の黒蜜が入っていたのです。

 この食感の意外性は、人にたとえれば昔のドラマにある、一見控えめな女性が眼鏡をとったら絶世の美女でした、というあれ(もちろん美男というのもあり)。北の城下町のお菓子のゆかしさに触れ、ますます町歩きに熱が入ったのでした。

 さて、次は最終回。早朝の逸品のお話です。

今月の人 伊吹有喜さん
出版社勤務を経て、2008年『風待ちのひと』で第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し作家デビュー。『ミッドナイト・バス』(2018年に映画化)、『彼方の友へ』が直木賞候補作となる。盛岡を舞台にした『雲を紡ぐ』の執筆のため、岩手県を何度も訪れた。