謎めく名前と食感の北の城下町のお菓子
リレーエッセイ イワテライフの楽しみ方
伊吹有喜さん第3回(全4回)

盛岡取材をかねて散歩中に、「タンキリ」という謎めいたお菓子の名前を聞きました。「たんきり飴」のようなのど飴を想像しながらお店に行きますと、餅米が材料の、ねじりの入った細長い棒状のお菓子でした。短冊に切られているから「たんきり」だとか。折しも七夕の時期だったので、たいそう風雅な名前に感じられました。
私が好きなのは青豆きなこが入った「青たんきり」。きなこの素朴なぽくぽくした味わいが、ほうじ茶によく合います。
再び盛岡に来た時、今度は「キリセンショ」という名前のお菓子を知りました。ベージュか茶色の小さな餅菓子で、上にクルミなどが飾られているのですが、お店によって色や飾りが微妙に違うのです。さらに謎めいていたのはその食感。初めて食べた時、お餅からとろりと流れ出た蜜に驚き、二回目は、ひんやりとした蜜の甘美さにうっとり。お餅の内部に液体状の黒蜜が入っていたのです。
この食感の意外性は、人にたとえれば昔のドラマにある、一見控えめな女性が眼鏡をとったら絶世の美女でした、というあれ(もちろん美男というのもあり)。北の城下町のお菓子のゆかしさに触れ、ますます町歩きに熱が入ったのでした。
さて、次は最終回。早朝の逸品のお話です。
今月の人 伊吹有喜さん
