高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)は26日、国際リニアコライダー(ILC)の実現に向けた想定スケジュールを報道陣に示した。8月に国際推進チームを発足し、準備研究所を経て順調なら5年後にも正規の研究所設立と建設着手を見込む。今月公表された次期欧州素粒子物理戦略がILCの実現に強い期待感を示した経緯も踏まえ、準備作業を本格化させる。

 同チームはKEKを活動拠点とし、1年から1年半程度をかけて準備研究所の制度設計や組織、予算について世界の大学、研究所との交渉を行う。メンバーは世界の主要な加速器研究所の所長らでつくる国際将来加速器委員会(ICFA)が指名する。

 次の段階は準備研究所を設立し、ILCの建設や運営に向けた詰めを4年程度で進め、関係国の政府間合意が得られれば5年後にもILCの研究所の組織立ち上げと建設着手を見込む。建設期間は10年程度で、順調なら運用開始は2035年ごろ。

 稼働期間は「20年以上」としているが、先進地の欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)は地下トンネルの加速器などを更新しながら60年以上稼働しており、ILCも同様の展開が想定される。

 これまでILC計画を推進してきたICFAの実動部隊リニアコライダー・コラボレーション(LCC)は同チームの発足に伴い解消する。部隊が推進するもう一つの直線加速器計画に次期欧州戦略が言及せず、重要性が強調されたILCに特化した組織を編成する。

 KEKの岡田安弘理事はビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を通じて「国際的な議論により、ILCの道筋が明確になった」と説明。新型コロナウイルス感染症の影響で各国は財政出動を迫られているが「15年、20年というスケールで、世界の状況を見ながら段階を上げていく。コロナ終息後は科学技術で国際協力をしていくことが絶対必要になる」と述べた。

 宇宙創成の謎に迫るILCは岩手、宮城両県にまたがる北上山地(北上高地)が候補地とされる。次期欧州戦略は「ヒッグス粒子」の詳細研究施設が次の衝突型加速器の中で「最優先」と位置づけ、日本でのタイムリーな実現へ「協働を望む」との姿勢を示した。