宮古支局に着任して2カ月余り。初めての沿岸地域での生活は、力強い三陸の自然とそこに生きる人たちの姿に心を動かされることの連続だ。

 楽しみにしていた仕事の一つが漁業の取材。5月中旬には宮古市の千鶏漁港でコンブ養殖を営む佐藤盛さん(60)の船に乗せてもらった。

 コンブ、ワカメ養殖の仕組みを優しく教えてもらい、沖へと船を進める船長の姿を漁師見習いになった心持ちでカメラに収めた。

 しかし、養殖施設で船が止まると状況が一変。前後左右に足元が動き、重力の向きが定まらない感覚に三半規管が白旗を上げた。漁師見習いどころではない海での経験不足を痛感した。

 漁港に戻る途中、佐藤さんが岸壁近くの岩を「何に見える」と指さした。人のようなずんぐりとしたシルエットにとがった頭、耳、目、鼻。横向きのゴリラが海に肩まで漬かっている姿にしか見えなかった。

 「ここがおらたちの観光スポットだ」と笑う佐藤さん。再び船が動きだすと、ゴリラは何の変哲もない大岩に変わっていた。

 視点の角度が少し変わるだけで見えるものが違ってくる。世界が新型コロナウイルス感染症という共通の課題に目を向ける今だからこそ、ここ三陸からの視点を大切にしていきたい。

(佐藤渉)