リレーエッセイ イワテライフの楽しみ方

伊吹有喜さん第2回(全4回)

 
醤油を垂らした『和ぐるみソフトクリーム』。和グルミのトッピングもたっぷり=もりおか町家物語館

 盛岡取材のなかで心惹かれたものに、盛岡町家があります。特に、常居の天窓から降り注ぐ光の美しさに魅せられました。

 そこで『雲を紡ぐ』に登場する「ショウルーム」は町家にしたいと考えました。モデルにしたのは『大慈清水御休み処』と『もりおか町家物語館』です。この物語館の近くから見える岩手山も好きです。通りの先に悠然とそびえる姿がとてもあたたかく感じられるのです。

 この『もりおか町家物語館』の蔵には、和グルミの風味がフワリと広がる絶品のソフトクリームがあります。そのままでも美味ですが、さらに味わい深いのは、途中で醤油を足すのをおすすめされること。そっと垂らしてみると、みたらし団子や五平餅のような香ばしい甘みが楽しめました。

 ソフトクリームの魅力は、名前通りの柔らかさ。楽に口に運べて、上質な牛乳のおいしさをぞんぶんに味わえるところ。最初はぽってりとした口当たり、しだいにとろけて落ちそうになる軽やかさも好きです。旅先で「ああ、コーンから落ちる~!」とあわてて食べた記憶は風景とともに忘れられない思い出に。酪農がさかんな岩手では、そんな美味なご当地ソフトクリームにたくさん出合いました。

 さて次回は、謎めいた美形が登場。甘くて危険なお菓子のお話です。

今月の人 伊吹有喜さん
出版社勤務を経て、2008年『風待ちのひと』で第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し作家デビュー。『ミッドナイト・バス』(2018年に映画化)、『彼方の友へ』が直木賞候補作となる。盛岡を舞台にした『雲を紡ぐ』の執筆のため、岩手県を何度も訪れた。