2020.04.23

伝えたい 思いもっと

オペレートナビを操作する郷家準一さん(右)と妻の知洸さん。パソコンや文字盤も併用し、コミュニケーションを図る
オペレートナビを操作する郷家準一さん(右)と妻の知洸さん。パソコンや文字盤も併用し、コミュニケーションを図る

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

郷家 準一ごうけ・じゅんいちさん(42)=奥州市水沢

 

①コミュニケーション

 「間違ってるとき、ある?」。妻の知洸(ちひろ)さん(30)の問い掛けに、郷家準一さんはまぶたを2回、しっかりと閉じた。「あるんだ、でしょうね…。でもほぼないでしょ」。夫に同意を求める知洸さんが、ちょっぴり口をとがらせた。

 郷家さんは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者。全身の筋肉が衰える進行性の難病で、37歳の2015年6月に診断を受けた。

 か細く「うっ」「あっ」という声は出せるが、会話はできない。コミュニケーションのために、複数の方法を使い分けている。

 夫婦のやりとりは、主に視線とまぶたを閉じて行う。郷家さんは伝えたいことがあると「じっと私を見て、してほしいことの方に目線を向ける」(知洸さん)。

 車椅子に乗ったまま、トイレのときは「下(下腹部)」、頭がかゆいと「左上」、胃ろうに何か水分を入れてほしいときは「冷蔵庫の方」―といった具合。知洸さんは視線を読み取り、考えていることを確認する。まぶたを閉じなかったり、頭がわずかに動くと、違うという返事になる。たまに「間違う」のは、こんなときだ。

 2カ月に1回定期入院する病院や外出先には、意思伝達の装置を持ち込む。愛用するパソコンソフト「オペレートナビ」は文字を打つと読み上げてくれたり、インターネット、会員制交流サイト(SNS)も楽しめる。

 細長の小さな風船がマウス代わり。ほんの少し動く右手の人さし指で、空気の流れを起こして操作する。利点はナースコールを装置に接続できること。病院では昼も夜も手に握られた状態で過ごす。

 郷家さんは知洸さんや長女の菜七子(ななこ)ちゃん(3)といると、つい〝ニヤニヤ〟が増える。

 知洸さんは夫の病気を踏まえ「表情が豊かで喜怒哀楽もはっきり分かる。コミュニケーションは困っていない」と受け止めている。

 「球(きゅう)麻痺(まひ)型」と呼ばれる、ろれつが回らなくなる症状が始まりだった。話せなくなるまでは早かった。

 郷家さんは「(意思疎通には)満足していません。頭の中で思っていることを文字にする装置があったら」。もっと伝えたい、会話をしたいという願いを短文のメールに込めた。

 

 難病とは 難病法は難病を▽発病の機構が明らかでない▽治療法が確立していない▽希少な疾病▽長期の療養を必要とする―の条件を満たす疾病と定義。難病のうち医療費助成の対象となるものを指定難病とし現在、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む計333の疾病が指定されている。2018年度末現在、指定難病患者は国内91万2714人、県内9135人、うちALS患者は国内9805人、県内161人。

 

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