東日本大震災からまもなく9年。大槌町の大槌学園(松橋文明学園長、生徒626人)の4年生62人は震災復興の記事を通して「生きてゆくこと」について考えを深め、未来への決意を新たにしている。

生きる意味問う

 4年生は2月に同校で行われた「2分の1成人式」で保護者や教員らが見守る中、堂々と決意を発表した。10歳の節目を祝い、未来へ飛躍する機会となるよう毎年行っている。小中一貫校のため、他校のように小学校の卒業式がない同校にとって、卒業式に代わるセレモニーとして位置付けられている。

 本番に向けて、町の伝統や文化を学ぶ「ふるさと科」の時間に新聞を活用して決意を考えた。震災に関する記事を読むことで復興の歩みを知り、新しい言葉に出合える。授業のテーマは「『生きてゆくことの意味』を考えよう~半分大人になる ぼくたち、わたしたち」。2クラス合同で取り組んだ。

 教材に選んだのは、2012年から8年分の3月11日付の岩手日報本紙1面と社会面、別刷り特集の一部。児童は悲しみと教訓を忘れず復興に立ち上がった被災地の人たちの姿に向き合い、「明るく、前向きな言葉」を探した。

東日本大震災後8年間の3月11日付岩手日報1面を読みながら、明るく、前向きな言葉を探す大槌学園の児童

 1組担任の多田俊輔教諭は「難しいテーマだが10年間生きてきて半分大人になる今だからこそ、皆さんに生きていくことの意味を考えてほしい」と呼び掛けた。

明るい言葉探す

 「生まれてありがとう」「思いを力に前へ」「悲しさをやさしさへ」。力が湧いてくる言葉がたくさん見つかった。それらの言葉を手掛かりに「生きてゆくことの意味」について考えを深めた。

 生きてゆくこととは-。児童は「人と人とが助け合うこと」「未来へ歩み、胸を張って生きること」「授けられた命を大切に守ってゆくこと」など、人との絆の力や命の尊さを感じ取っていた。児童の思いを受け止めた多田教諭は「これが正解というものはない。一人一人が思ったこと、感じたこと、それが全て答えになる」と諭した。

互いに決意披露

「生きてゆくことの意味」について発表しようと手を挙げる児童

 最後に、記事を読んで出合った言葉や自分の気持ちを表す言葉を紡いで「自分の決意」を固め、互いに披露し合った。

 震災4年の3月11日付の記事から「歩み」と「希望」を見つけた中庭澪依(れい)君は「一日一日を大切に、一歩一歩前に進みたい。将来はプロ野球選手になる」と笑顔を見せた。

 小国湊平(そうへい)君は「記事で読んだようにぼくも全力で生きていく。鉄職人を目指して頑張りたい」と目を輝かせた。

 東日本大震災のとき、まだ0歳、1歳だった4年生。多田教諭は「3月11日の8年分の記事や写真を見ていくと、感じるものがあったと思う。震災の記憶をつないでいってほしい」と願いを込めた。

「私の決意を聞いてください」。授業の最後に友だちと互いの決意を伝え合う児童

記事で言葉の力育む

大槌学園・多田俊輔教諭

 大槌学園でNIEに取り組む多田俊輔教諭が、東日本大震災の記事を活用した狙いや児童への願いを語る。

児童が新聞から見つけた明るく前向きな言葉をホワイトボードに書き出していく多田俊輔教諭

 小中一貫校である大槌学園は4年生を一区切りに「2分の1成人式」を行い、児童の成長を確かめて次へのステップとしている。児童には未来への決意を発表してもらっているが、決意を考えるとき、自分の思いを表現する言葉がもっと必要だと思った。普段の作文をみていると、4年生はまだ語彙(ごい)が少ない。そこで、言葉が豊富な新聞を活用しようと考えた。

 記事は東日本大震災に関するものにした。日付は震災発生日の3月11日付にし、2012年から19年までの岩手日報の1面と社会面などを取り寄せた。震災の節目である3月11日の1面の記事は、被災地の「ひと」を取り上げ、どの年も情報量、熱量ともに圧倒される。子どもたちにとって新聞は記録としてだけでなく、非常に力のある教材だ。

 記事の中で、最初は取材を受けた人の気持ちを表しているコメント部分(かぎかっこの中の文章)を蛍光ペンでマークしてもらった。次に「明るく、前向きな言葉」を探す作業に移った。その言葉探しによって、生きることの意味や未来への決意を伝える表現に焦点を絞り込むことができた。

 震災を学ぶとき、地域によって配慮が必要になる。私も大船渡で震災を経験し、そう思う。しかし、いつかは、子どもたちに生の記事を読んでもらって震災への思いを伝え合う授業ができればと思う。

 震災から4年の2015年3月11日付岩手日報1面の見出し「君の歩みは希望」。震災当日に誕生した女の子が成長した写真とともに掲載された。私がこれまで見てきた見出しの中で一番心に響いたものであり、子どもたちも誕生の記事と4年後の記事を読んで命の大切さを学んだ。

 子どもたちが生きるために、言葉の力を育てていきたい。 

(談)