人とのつながり、助けを求める勇気、助けを必要とする人に手を差し伸べる優しさ-。年間を通して平和学習「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」に取り組む沖縄県宜野湾市の大山小(宮城信夫校長、児童632人)が目指す児童の姿だ。3学期に「東日本大震災」をテーマに学習したクラスは、岩手日報の震災特別号外・沖縄版(3月11日付)を活用。災害から命を守るための教訓を胸に刻んだ。

平和学習の一環

 同校は海に近く、海抜15メートルの津波浸水想定区域にある。避難先の高台は米軍の普天間飛行場のゲート前の一角。年に1回実施している防災訓練で立ち入りが許可され、児童が避難ルートを駆け上がる。

 「命どぅ宝」は「命こそ宝」を意味する。平和学習の一環として、東日本大震災の学習に取り組んだスマイル1組と2組は1年生から6年生まで14人。授業は自立活動(人間関係の形成)や学活、道徳などの時間を使い、全6時間実施した。1組担任の新城(しんじょう)綾子教諭は「避難への意識を高めることと、沖縄戦同様、過去の悲惨な出来事と向き合い、距離感を縮めるためにテーマに選んだ」と説明する。

 3月は新型コロナウイルスの感染防止のため休校となり、学校を再開した16日が震災学習の最後の授業になった。児童は震災特別号外を読み、被害が大きく、多くの人が犠牲になったことや、復興が進む一方で現在も仮設住宅で暮らす人がいることを知った。

 「地震が来たとき、一人ぼっちの人もいたよね。怖かったよね」(4年・浜川彩那(はまがわ・あやな)さん)。「家族や友達がいなくなって、いろいろなものをなくして、つらい思いをしたけれど、元気を出してください」(2年・森島天(てぃん)君)。「苦しい思いを乗り越えて、ここまできてすごい」(2年・佐藤桃香(ももか)さん)。沖縄から2千キロ離れた岩手の被災地に思いをはせた。

備える決意新た

 フロント面「伝え続ける」は、震災を経験した釜石市から全国へ向けた10のメッセージを掲載。「未来のだれかが同じ思いをしないように いま、あなたにできること。『避難を続けること』『備えること』『語り継ぐこと』」で結んでいる。

 メッセージを読んだ児童は「命を大切にする」(1年・大城京(おおしろ・けい)君)、「津波が来る前に逃げる」(4年・浜川優那(ゆうな)さん)、「高いところに逃げる。津波石からも分かる」(2年・長友琉(りゅう)君)、「困っている人を助ける」(1年・仲村冬音(なかむら・ふゆと)君)と災害に備える決意を新たにした。

 岩手の「津波てんでんこ」と沖縄の「命どぅ宝」。新城教諭は「命を大切にするという思いでつながっていると感じる。災害も戦争も風化させることなく、体験者の記憶や思いを未来へつないでいきたい」と願う。

被害の大きさを知り、岩手の被災地に思いを寄せる4年の浜川優那さん
被災地の悲しみを思い「元気を出してほしい」と願う2年の森島天君
「地震のときは高台に避難する」。記事から震災の教訓を読み取る2年の長友琉君
震災から9年。岩手の今を伝える記事を集中して読む4年の浜川彩那さん(左)と2年の佐藤桃香さん

災害と戦争 風化させない

 「東日本大震災」をテーマに、平和学習の授業で被災地の地元紙を活用した大山小の新城綾子教諭(スマイル1組担任)と田中京子教諭(同2組担任)が、学習の目的や岩手に寄せる思いを寄稿した。

 沖縄戦と東日本大震災。私たちが沖縄戦の悲劇を継承し伝えていくことと、岩手日報の東日本大震災特別号外の見出しにあるように教訓を「伝え続ける」こと。戦災と自然災害の違いはあるが、どちらも「風化させない」というテーマが共通すると感じた。

 戦後75年になる今、戦争を経験していない世代ができることは、関心を持ち、心を寄せること。体験者の記憶や思いをつなぐ「橋渡し役」になること。それを実行するためには資料が必要になってくる。その意味で新聞は大きな役割を持っている。

 今回、特別号外を活用して震災の授業を行い、新たな学びに取り組むことができた。すぐに「目に見える支え」にはなれないかもしれないが、沖縄からずっと岩手の皆さんに寄り添い続けたい。そして、児童と一緒に学校の学びを通じて「心の支え」になる活動を広げ、次世代へとつなげていきたい。

 また、震災の教訓から、災害へ「備える」という意識をもっと高めていかなければと感じた。大山小は年に1回避難訓練を行っているが、来年度からは「逃げる」だけでなく「備える」という視点を持って取り組んでいきたい。

 戦争や震災のように過去の悲惨な経験に立ち向かうことは苦しいこと。体験者は話せるようになるまで時間がかかると思うが、私たちは耳を傾けたい。

 沖縄から「命どぅ宝」、岩手から「津波てんでんこ」。風化させないために、語り続けること、学び続けること、発信し続けること、寄り添い続けることが、あすの希望につながると思う。

※「新しい風に乗って」は今回で終わります